窪田正孝主演の朝ドラ「エール」(NHK)の第35話が5月15日に放送され、3月29日に新型コロナウイルスによる肺炎のために亡くなったコメディアンの志村けんさんと、窪田が初めて対面するシーンがあった。志村さんの圧倒的な存在感が大きな反響を呼んでいる。
「第35話は、コロンブスレコードとの契約が作曲家界の重鎮・小山田耕三(志村)の推薦で決まったことを知った裕一(窪田)が、会社のサロンで小山田と遭遇。意を決して、しどろもどろになりながら話しかけるといったシーンが描かれました」(テレビ誌ライター)
幼少の頃から、小山田の本で音楽の勉強をしてきたことへの感謝の言葉を伝え、「いつか、先生と同じ(西洋音楽)の青レーベルで音楽を書かせていただけるよう、精進して参ります」と思いを口にすると、小山田は「古山君。(流行歌の)赤レーベルでは、どんな曲を出したのかな?君は赤レーベル専属の作曲家だよね?」と釘を刺され、ぐうの音も出ない裕一。この緊迫したやりとりに、視聴者から「コントの時と全然雰囲気が違い、威厳ある演技」「濃厚な、そして心情伝わる演技のぶつかり合い。目が離せなかった」などの声があがった。
コント一筋に生きてきた志村さんが、役者としての凄みを見せつけたシーンだったが、もともとシリアスな演技にも定評があったというのは、志村さんをよく知る放送作家だ。
「1987年から始まった『志村けんのだいじょうぶだぁ』(フジテレビ系)には、お笑いの要素がまったくないサイレントドラマ“シリアス無言劇”というものがありました。10分前後の短いものから、長いものでは30分近くもある本格ドラマさながらの悲劇ばかり。宗次郎のオカリナの調べに乗って展開するこの作品こそ、ファンの間では隠れた傑作と呼ばれています」
今回の朝ドラ「エール」が遺作となった志村さん。これを機にかつての「シリアス無言劇」が脚光を浴びそうだ。
(窪田史朗)