階段を上っている最中に急な息苦しさに襲われ、人によっては失神してしまうことも……。そんな症状がきっかけで、ある病気であることが分かったという女性の患者さんがいます。その病気とは、「肺動脈性肺高血圧症(PAH)」。
この病気は、心臓から肺に血液を送る役割の肺動脈という血管の圧力が異常に上昇、全身に必要とされる充分な血液量を送れなくなってしまうことで、全身機能が低下する難病です。
発症頻度は100万人に1~2人とまれですが、妊娠可能年齢の若い女性に好発し、女性の患者さんは男性の約2倍もいるそうなので、同年代の女性であればぜひ知っておきたいことですね。患者さんの体験談によれば、病気が進行すると子どもを抱っこすることや、スーパーで大根を買って帰ることすらできなくなるそうです。
先日実施された、PAHの専門医と患者さんが集ったヤンセンファーマ主催のオンラインバーチャルイベント『60 minutes together PAHバーチャルキャンプ』では、NPO法人 肺高血圧症研究会・代表理事で、自身もPAHを患っている重藤啓子さんの講演も行われました。
40代で発症したという重藤さんは、イタリアの観光地で急な坂道を上っていたところ、息苦しくなり失神してしまいました。それが症状に気付いたきっかけだったといいます。
「私は40代だったのでそれほどショックではありませんでしたが、若い人や子どもだったらかわいそうだと思います。周りに同じ病気の人がいませんしね」
また、PAHの患者さんが診断や治療経過観察のために受ける『6分間の歩行検査』について、重藤さんは「6分間歩行は、病気を受け入れていない患者さんにとっては地獄。ただ単に歩くだけだから。くるくる回るんです。疲れたら止まってもいいので、体力的な問題というより、人間の尊厳の問題と感じてしまう」と話します。
ちなみにオンラインイベントでは、6分間の歩行検査を患者さんが前向きな気持ちで実施できるよう、アーティストの一青窈さんが書き下ろした楽曲『6分』のビデオも披露されました。他のアーティストたちもこの主旨に賛同し、6分間の楽曲を提供。そのプレイリストが、ヤンセンファーマのSpotifyアカウント上で、期間限定で聴くことができます。
重藤さん自身は、どんなことがきっかけで病気を受け入れられたのでしょうか?
「同じPAHのお友だちができた後、患者の会の代表理事になりました。代表になると何かしらやることがいっぱいありますし、自分のことを考えている余裕がないんですよ。そうして自分の心配ではないところに意識がどんどん広がっていきました。多分それが(病気を)受け入れるコツだと思います」
最後に、30~40代の一般女性に向けてメッセージをお願いしたところ、「この病気を知ってください。周囲に患者さんがいるかもしれません」と重藤さん。今は専門医もいて薬もあるので、昔とは違うといいます。
患者さんたちも、診断を受けたときは「まさか自分が」と思うそう。他人事とは思わず、「もしも自分の身に起きたら……」と想像してみることで、何か意識が高まるかもしれません。
他にも、難病を抱える患者さんたちをサポートするオンラインイベントがいくつか開催されています。
例えばこの6月には、潰瘍性大腸炎・クローン病などの炎症性腸疾患(IBD)オンラインコミュニティ『Gコミュニティ』を運営するジーケアが、田辺三菱製薬と共催で就労イベント『IBDとともに働き続けるコツ~事務職編~』を開催します。Zoomで手軽に参加できるので、こういったイベントに興味を持ってみるだけでも、世の中に貢献できるのではないでしょうか。