昭和に隆盛を誇った日活ロマン系映画。映画制作会社の日活が、成人向けに1971年に始めた映画レーベルですが、ここを足がかりに多くの俳優、女優、また映画監督がメジャーへと羽ばたいていったことでも知られています。
ロマン系は男女が絡むシーンが多く、男性をターゲットにしたもので「女性には縁がない」ものと思っている人はいるでしょう。しかし、女優の橋本愛さんや臼田あさ美さんなども、実はロマン系映画のファン。橋本さんは高校卒業後、新橋にあったロマン劇場に足繁く通い詰めていたことを、自身のSNSで明かしています。
雑誌やウェブで活動する女性映画ライターはこう話します。
「ロマン系映画は、ただ絡みを楽しむだけの作品ではなく、ストーリー性があります。登場人物のキャラクターも濃く、挫折したサラリーマンや学生、中年ロックンローラーなど、様々な人間が描かれています。女性がただのモノとして扱われるのではなく、そこにお互いの情愛があり、ストーリーが成立する。ですから女性でもファンが多いんです」
また、「絡みさえあれば撮りたいものを撮れるということで、若い監督たちが伸び伸びと作品を作ってきた」とは同ライター。
たとえば「デスノート」で知られる金子修介監督も、84年にロマン系からデビュー。それが「エースをねらえ!」をパロディ化した作品『宇能鴻一郎の濡れて打つ』で、お笑い要素をたっぷり盛り込んだ学園ドラマとなっています。
さて、そんな日活のロマン系映画は今年で45周年を迎えるそう。それを記念して特別プロジェクトも始動しました。
そこでは28年ぶりに、5人の監督による新たな5作品が11月より順次公開されていくんだとか。
一番手となるのは「世界の中心で、愛をさけぶ」などで知られる行定勲監督。ほかに園子温監督、白石和彌監督や塩田明彦監督、中田秀夫監督が集まっていて、「リング」シリーズで知られる中田監督の作品「ホワイトリリー」は女性同士の純愛を描いた内容とのこと。
いずれの作品も若い女性をターゲットにしており、見応えのあるストーリー、美しい映像が楽しめそうですね。前出の映画ライターが続けて話します。
「今年は映画史が刷新されるような作品が多いんです。『シン・ゴジラ』や『君の名は。』が話題になりましたが、ゴジラはこれまでのシリーズとはまったく違った、庵野監督による新たなゴジラワールドが展開されました。『君の名は。』も、ジブリに独占されていたオトナが胸を打たれる美しいアニメ、という枠を勝ち取った。ロマン系映画も、シリーズの良さを踏まえながら“女性が楽しむ新たなジャンル”を確立していきそうですね」
この機会にぜひ、映画館へ足を運んでみてください。