この見事な構成に、視聴者のほうこそ「なんも言えねえ」と感心していたことだろう。
再放送中のNHK連続テレビ小説「あまちゃん」では、4月18日放送の第15回にて、北三陸市定例の首脳会議「K3NSP行動サミット」が開催された。そこで繰り広げられた“大喜利”に視聴者が爆笑するなか、最後の最後にヒロインのアキ(能年玲奈)が見せた笑顔に、多くの人が魅了されていたのである。
仰々しい名前の「K3NSP」(北三陸をなんとかすっぺ)だが、メンバーはアキの祖母で海女クラブ会長の夏(宮本信子)や、北鉄・北三陸駅の駅長を務める大吉(杉本哲太)など、いつもの面々ばかり。
ズラリと並んだ右端にはバー梨明日の常連である琥珀職人の勉さん(塩見三省)もいて、視聴者が「なぜ?」と疑問に思うなか、ナレーションできっちりと「なぜか勉さん」とフォローするところは流石だ。
「K3NSPの会議では北三陸市の観光を盛り上げるべく、海女と北鉄に次ぐ第三の目玉を考えることがテーマに。まずはご当地グルメ、続いてはミスコンの名称を考えることになったものの、そのやり取りは大喜利そのものとなっていました」(テレビ誌ライター)
ご当地グルメにしろミスコンの名称にしろ「琥珀」や「まめぶ汁」が落ちに使われるパターンは鉄板。ミスコンでは北鉄がテーマになると「ミス人身事故」や「ミスダイヤの乱れ」と話が迷走し、しまいにはアキの母親・春子(小泉今日子)までが「運転ミス!」と参戦する始末。そんな脱線ぶりは視聴者としても大歓迎だろう。
その話に割り込んできたのが、ウニ丼を20個完売してきたというアキ。嬉しそうに「ミスつり革!」と叫ぶも、大吉からは「アキちゃん(には)聞いてねえだろ!」と諭される始末だ。
そんなアキの笑顔こそが、実はこの回における重要なハイライトだったというのである。
「アキは前回、夏の指示を守らずに溺れかけてしまい、海女失格の烙印を押されることに。毎日、海に潜りたいのに、潜ることを禁じられていました。そのうずうずが溜まっているアキは終始、浮かない表情に。若さいっぱいではつらつとした笑顔が魅力ゆえ、笑顔を見せないことで落胆ぶりを表していたのです」(前出・テレビ誌ライター)
K3NSP会議が大いに盛り上がった今回、アキが笑顔を見せないままで終わることもできただろう。だが朝ドラではヒロインが目当ての視聴者が多いこともまた事実。いくら大喜利が面白すぎたとはいえ、アキが暗い表情のままでは朝からすっきりできない人もいたに違いない。
「終盤にアキが笑顔を見せたことにより、彼女が心の底まで落ち込んでいるわけでないことも示すことができました。朝ドラではヒロインがなにかと苦難の道を歩みがちですが、この『あまちゃん』では暗めの内容であっても笑いでオブラートすることにより、常に視聴者を楽しませる展開が持ち味。大喜利の最中にアキが見せた笑顔には、やはり彼女こそがヒロインであることを再確認させてくれる効果もあったのではないでしょうか」(前出・テレビ誌ライター)
私たちが見たい朝ドラのヒロインは、こんなキャラクターなんだ。ここ最近の朝ドラに失望の念を抱いていた視聴者は、「あまちゃん」の再放送であらためて、王道ヒロインの何たるかを再確認できているのかもしれない。