その演出だけは視聴者も受け入れられなかったようだ。
4月26日に再放送されたNHK連続テレビ小説「あまちゃん」第21回では、新人海女のアキ(能年玲奈)を目当てに多数の観光客が袖が浜に殺到。アキがすっかりアイドル扱いされることとなった。そんなアキへの評価に、視聴者が驚いていたようだ。
アキの祖母で海女クラブの会長を務める夏(宮本信子)は、「アキはブスではねえが、普通の女子高生だべ」と、アキの人気爆発にびっくり。他の海女さんたちも同じような印象を抱いているらしい。
さらにアキに対して厳しいのは、アイドルオタクのヒビキ一郎(村杉蝉之介)だ。アキより先に人気が爆発していたミス北鉄のユイ(橋本愛)を発掘したと自負するヒビキは、今回の北三陸ブームについて「普通のブスにまでスポットライトが当たる」と断言。すなわち、アキのことをブス扱いしていたのである。
「なにしろヒビキは4月14日再放送の第11回でも、アキに対して『どけよブス!』と暴言を吐いていましたからね。一方では今回は『北鉄のユイちゃんの可愛さは神レベル』と語っており、ユイとアキを“月とすっぽん”に評している様子。演出上は二人の対比が前提となっていますが、視聴者側はその設定を素直に受け入れることができないようです」(テレビ誌ライター)
ヒビキの言葉に視聴者からは<こいつ目が腐ってる><ムカつくんだよ!>と怒りの声が続出。さらには<酷い脚本><説得力ないよ>などと、制作陣に対するクレームもあがっている。
とはいえ本作を観ていれば、ユイとアキの対比が大きな意味を持っていることは分かるはず。そもそもアキをブス扱いしているのはヒビキ一人であり、袖が浜に殺到したアイドルオタクたちはアキのことを可愛いと思っているのは明らかだ。それなのになぜ、視聴者はヒビキのセリフに逐一反応してしまうのだろうか?
アキを演じる能年は所属事務所とのトラブルにより、「あまちゃん」以降の地上波ドラマ出演が1本のみ。そのため若かりしころの能年はいわば「幻の美少女」的な存在となっており、2013年に「あまちゃん」を観ていなかった人たちにとって今回の再放送は、演技している能年を目の当たりにする初めての機会となっているのである。
「この再放送で令和の視聴者たちは、19歳当時の能年が神懸かり的な可愛らしさだったことを知ることになりました。その衝撃ゆえ、ヒビキによるブス呼ばわりに大きな違和感を抱いてしまうのも無理はないのでしょう」(前作・テレビ誌ライター)
どうやら今回の再放送は、能年の可愛らしさを封じ込めたタイムカプセルを、10年ぶりに開けたも同然なのかもしれない。