あれ、彼女がその言葉を口にするの? 不思議に思った視聴者も少なくなかったようだ。
5月26日に再放送されたNHK連続テレビ小説「あまちゃん」第47回では、北鉄のお座敷列車に乗る予定の「潮騒のメモリーズ」ことアキ(能年玲奈)とユイ(橋本愛)が、歌のレッスンに苦闘。アキはもともと歌が苦手で、ユイのほうは心ここにあらずといった様子だった。
レッスン後、駅で帰宅の列車を待つ二人。アキがお座敷列車について「絶対楽しいじゃん!」と笑顔を見せると、ユイが「遊びじゃないんだよ!」と激高。「私にとってはスタート地点だし、大事なチャンスなんだぁ! 真剣にやってくんないと困るんだぁ!」と、普段の姿からは想像もつかない憤怒の表情を見せたのである。
アキが「ごめん」と謝ると我に返ったのか、熱くなってしまったと落ち込むユイ。プレッシャーへの弱音を吐きつつ「足引っ張んないように頑張る」との姿勢を見せ、アキは「オラも頑張る」と返していた。
本番が近づいたことで緊張が高まったのか、感情が高ぶっていたユイ。だが視聴者はそんな激高ぶりよりも、ユイが口にした「頑張る」という言葉に驚いていたというのだ。
「第43回でユイ自身が『「頑張る」って言葉、大っ嫌いなんです、私!』と主張していたばかりですからね。頑張るということはつまり報われないこと、との持論を口にしていた彼女。そんなユイが今回、自ら『頑張る』と口走った姿は、自らの態度を180度転換したも同然です」(テレビ誌ライター)
なぜユイは、あれほど嫌っていた「頑張る」という言葉を口にしたのか。その理由は第47回のラストシーンに垣間見えていたという。それはユイが種市先輩(福士蒼汰)と一緒にいる場面だった。
種市先輩にはアキがぞっこんで、潜水士の資格試験に受かったらデートしてほしいと申し入れていた。念願かなって合格するも、種市はデートの約束をスルー。その一方で種市はユイのことを横目でチラ見するなど、どうやらユイに対して好意を抱いている様子だ。
その種市がユイと一緒にいたのは一大事。しかもユイは、普段は一緒の電車に乗って帰るアキに対して「一人になりたいから先帰って」と促していたのである。
「その言葉がユイにとって、種市と一緒に過ごすための方便だったことは明らか。そうなるとユイが激高したこと自体、アキを先に帰らせるための演技だったのかもしれません。思えば『大事なチャンスなんだぁ!』というセリフもなんだか芝居がかっていましたし、演技だからこそ嫌いなはずの『頑張る』という言葉まで口を突いて出てしまう。すべての行動が芝居じみていたのです」(前出・テレビ誌ライター)
10年前の本放送を観ていた視聴者ならあらためて、この場面が伏線でもあり、ターニングポイントだったと思い出したことだろう。果たしてユイと種市の二人はどうなるのか、そして種市からのメール返信を待ち続けるアキの恋心は報われるのか。今後の展開からますます目が離せなくなったのは確実だ。