10月1日に最終回を迎えたNHKの朝ドラ「とと姉ちゃん」は、高視聴率を誇りながらも批判が噴出したドラマとして記憶に残るものとなった。事実、開始1カ月の段階で、批判が好意的な意見の3倍も寄せられたことをNHKも明かしている。
批判が集中しているのは演者でなく西田征史氏による脚本のマズさにあると指摘するのは、朝ドラに詳しいエンタメ誌ライターだ。
「雑誌『暮しの手帖』や同誌を創刊した大橋鎮子さんをモチーフにしていますが、拝金主義で努力しないヒロイン、男尊女卑的な思想、無能な編集者たちと、モチーフの内面はまったくの別物になりました。描かれた“丁寧な暮らし”は数えるほどで、家族間での不自然な敬語と何十回と登場した靴を揃えるシーン、病人に出すお粥に人参の飾り切りを乗せる謎のエピソードぐらい。つじつまの合わない場面の連続でイライラした視聴者も多かったでしょう」
演出を疑問視する声もある。それを象徴するのがNHK「スタジオパークからこんにちは」や「あさイチ」で出演者たちが明かした“キスシーン事件”だ。
「伊藤淳史と相楽樹が脚本になかったキスシーンを監督の一声で急きょ撮ることになったものの、そのシーンは使われることはなく、キスをしている写真は出演者たちにLINEで送られたそうです。主演を務めた高畑充希も『かわいそう』と言っていました。このイベント系学生サークルのような軽いノリがドラマにも滲み出ていたような気がします」(前出・エンタメ誌ライター)
このドラマを契機に、朝ドラはキャストよりもまず脚本家や演出家の名前をチェックする人たちが増えそうだ。
(笠松和美)