どうやら今後は、ドラマならではの創作要素がメインになってきそうだ。
6月1日放送のNHK連続テレビ小説「らんまん」第44回では、田邊教授(要潤)らが出席した音楽会に主人公の万太郎(神木隆之介)も同行。洋風のドレスで着飾った寿恵子(浜辺美波)の美しさに言葉が出なくなる様子が描かれた。
万太郎のモデルとなっている植物学者の牧野富太郎博士は、やはり菓子屋の娘だった寿衛子に一目ぼれ。知り合いを通して交際を申し入れたという経緯がある。本作ではその史実をなぞりつつも、鹿鳴館で開催される舞踏会に向け寿恵子がスカウトされたあたりから、創作要素が強くなっているようだ。
「牧野博士が東京大学の植物学教室で研究するようになったのは明治17年(1884年)のこと。しかも寿衛子と知り合ったのは明治20年であり、作中の明治15年よりも後のことです。一方で本作では鹿鳴館が重要な舞台になっており、同館がオープンしたのは明治16年のこと。さすがに歴史的建造物である鹿鳴館の開館時期をズラすわけにはいかず、万太郎の成長物語を鹿鳴館に合わせることにしたようですね」(芸能記者)
寿恵子は実業家の高藤(伊礼彼方)に見込まれ、鹿鳴館での舞踏会に参加する日本側の婦女に選抜。演じる浜辺がパッキリした顔つきなこともあり、洋風のドレスはよく似合っていた。
果たして寿恵子はどんなダンスを見せてくれるのか。視聴者の期待も高まるなか、彼女が今後進む道が今回、何気なく示されたというのである。
田邊教授は鹿鳴館の開館を控え、今後は日本の婦人が社交界の花形となり、女子教育の機運も高まるとの持論を熱弁。すると政府高官の佐伯(石川弾)は、「今度開校する御茶ノ水の高等女学校、教授が校長になればいいのでは?」と田邊教授に薦めていた。
ただ田邊教授のモデルである植物学者の矢田部良吉氏が、女子教育に関わっていたとの記録はない。つまり政府高官が田邊教授に高等女学校の教授を薦めたこと自体、創作要素だと言えよう。しかもその創作要素は寿恵子の将来にとって重要なポイントになる可能性を秘めているというのだ。
「寿恵子をスカウトした高藤は『やがてはあなたが皆に舞踏を教える立場になる』と告げていました。一方で田邊教授は女子教育に熱心な様子。その二つをかけ合わせれば、寿恵子が高等女学校にて舞踏の先生になるという未来が予想できるのです」(前出・芸能記者)
寿恵子はおそらく尋常小学(下等小学4年・上等小学4年)程度の学歴しかなく、通常なら高等女学校に関わることはあり得ない。ただ田邊教授は小学校中退の万太郎を東京大学の植物学教室に招き入れた人物。能力さえあれば学歴に関係なく登用するという考えの持ち主だ。
それゆえ日本の婦女としていち早くダンスを学び、その美しさでドレスを着こなす寿恵子であれば、田邊教授のお眼鏡にもかなうはず。どうやら「らんまん」では鹿鳴館を軸に、寿恵子をさらに魅力的な女性として描こうとしているのかもしれない。