1970~80年代のアイドルシーンを知る者には、なんともたまらない演出だったようだ。
6月14日に再放送されたNHK連続テレビ小説「あまちゃん」第63回では、鈴鹿ひろ美(薬師丸ひろ子)のデビュー作である映画「潮騒のメモリー」が話題の中心に。その内容に視聴者が沸くなか、意外なアイドルへのリスペクトが展開されたという。
その「潮騒のメモリー」は1986年に公開された青春映画という設定で、主演の鈴鹿ひろ美は数多くの映画賞を受賞したという。タイトルにこそ三島由紀夫の小説「潮騒」が入っているものの、映画主題歌にも歌われている「その火を飛び越えて」というシーンはなかったのだとか。それどころか荒唐無稽な作風が話題を呼んだと明かされていた。
「同映画が1975年に公開された山口百恵の主演映画『潮騒』をモチーフにしていることは明らか。時代こそ少しズレていますが、山口百恵はアイドル歌手が映画女優としても成功した先駆けであり、題材に取り上げるには好都合だったのでしょう。ちなみにドラマで語られた映画『潮騒のメモリー』とは設定が逆で、『潮騒』では山口の演じる初江が有力者の娘でした」(芸能ライター)
ともあれ年齢は別として、「あまちゃん」における鈴鹿ひろ美は山口百恵のような存在として描かれている。
ただ映画「潮騒」は1975年の邦画配給収入ランキングで6位というヒット作になったのに対し、主題歌の「少年の海 – 出逢い – 」はシングルカットされておらず、6thアルバム「16才のテーマ」のB面に収録されたのみ。鈴鹿ひろ美の歌った主題歌「潮騒のメモリー」が60万枚の大ヒットだったという設定とはずいぶん違う結果となっていた。
そのせいか分からないが、今回の第63回で映画「潮騒のメモリー」が話題になった際には、山口とは別のアイドル歌手をリスペクトする場面があったという。それは春子(小泉今日子)が「潮騒のメモリー」を観て泣いていたことが話題になったくだりでのことだ。
「アキ(能年玲奈)から春子が泣いていたと聞かされると、駅長の大吉(杉本哲太)は『あの北の冷血女と呼ばれた春ちゃんが!?』とびっくり。観光協会の菅原(吹越満)は『速いクルマさ乗っけられでも、急にスピンかけられでも泣かなかった春子さんが…』と感心していました。このセリフが、中森明菜の10thシングル『飾りじゃないのよ涙は』をモチーフにしているのは明らかです」(前出・芸能ライター)
その「飾りじゃないのよ涙は」は、菅原が指摘したように「速い車にのっけられても 急にスピンかけられても♪」という歌詞が知られている。
すなわち大吉や菅原は、春子のことを中森明菜になぞらえていたのである。
「山口百恵になぞらえているのは鈴鹿ひろ美のほうですから、春子が別のアイドルをモチーフとしているのは明らか。春子を演じる小泉自身も元アイドルですが、本作では『小泉今日子らしさ』を完全に封印しています。一方で昭和41年2月生まれの小泉は、昭和40年7月生まれの中森とは同学年。そう考えれば作中で春子を中森になぞらえているのも当然でしょう」(前出・芸能ライター)
小泉と中森は同じ「花の82年組」として人気を博していた。果たして今後の「あまちゃん」で他の82年組は登場するのか。当時のアイドル事情を知る視聴者としても期待の高まるところだろう。