4月14日に開業した「東急歌舞伎町タワー」にて、世間の耳目を集めていた施設の「ジェンダーレストイレ」が廃止。8月4日からは壁を設けて、性別ごとにエリアを分けた通常のトイレとしての運用が始まっている。
多様性を認める街づくりの象徴として鳴り物入りで導入されながら、あっという間に消え去ってしまったジェンダーレストイレ。時期尚早だったのか、それともコンセプト自体に無理があったのか。様々が声があがるなか、そもそも歌舞伎町タワーのジェンダーレストイレにはその構造上、女性利用者にとって看過できない問題点が潜んでいたというのである。
「現地に足を運んだ人なら誰しもが『なんでこんな作りなの?』と驚いたに違いないでしょう。というのも歌舞伎町タワーのジェンダーレストイレは、誰でも通ることができる通路に個室のドアが面しているという、あまりにも開放的すぎる構造だったからです」(現地を取材した女性誌ライター)
トイレと言えば通常、まずトイレ自体の入り口があり、中に入ると手洗い場やパウダールームがあって、その奥に各個室のドアが並んでいるというイメージだろう。
個室内がプライベート空間なのは明らかだが、トイレを済ませた後の手洗いや化粧直しをする場所も当然にプライベート空間であるはずだ。ところが歌舞伎町タワーのジェンダーレストイレにはそもそも入り口自体がなく、通路に手洗い場が置かれているような構造だったのである。
そのため個室に出入りするところも通路から丸見えなうえ、トイレ利用後に手を洗ったり化粧直ししているところも衆人環視の状況だった。これではもはや「多様性」うんぬん以前の、プライベート丸出し空間だったのではないだろうか。
「初めて同トイレを見た時には『ウソでしょ!?』と小さく叫んじゃいましたね。だって自分がトイレの個室に出入りするところが外から丸見えなんですよ。これでは純粋な女性用トイレだったとしても、ほとんどの女性は使用に抵抗があったはず。いったいどんな発想があればこんな異常な構造のトイレをヨシとしたのか、まったくもって理解できません」(前出・女性誌ライター)
ちなみにジェンダーレストイレの陰に隠れがちだが、同タワーの男性用小用トイレもなかなかの使いづらさが目立つ。ごく狭い空間に5つの小便器が並んでおり、肩が触れ合うような距離で用を足す必要がある。しかも背後にある手洗い場との距離もほとんどなく、リュックを背負っていればぶつかってしまうほどだ。
数多くの客が行き交う商業施設して、歌舞伎町タワーのトイレは明らかな落第点と指摘せざるを得なかった。それはジェンダーレストイレが廃止された後でもなお、改善が求められるのではないだろうか。