【らんまん】寿恵子が金貸しを騙したウソは、考証ミスではなく大ぼらだった!

 その言葉は決して制作側の考証ミスではなかったに違いなさそうだ。

 8月15日放送のNHK連続テレビ小説「らんまん」第97回では、寿恵子(浜辺美波)が借金取りを手玉に取る姿が描かれた。流れるような口ぶりで借金取りを説得し、返済どころから追い銭を借りることに成功した寿恵子。その際に口にした逸話が、史実に反していたという。

 夫で植物学者の万太郎(神木隆之介)が外国の書物などを買いあさるため、家計は火の車に。すでに200円の借金があり、この日は借金取りの磯部(六平直政)が十徳長屋の自宅に詰めかけていた。

 借金は返せない、石版印刷機は売れないと取りつく島のない寿恵子に、磯部は「もっと売れそうなものがあったな。奥さん売り飛ばしてやろうか」と抱き着くも、寿恵子は華麗に振り払い、さらには「たかが二百円のはした金、ああ小せえ小せえ」と言い放つ始末。強面の借金取りに一切ビビらないところはさすが、柳橋で売れっ子芸者だった母親の娘といったところか。

 すると寿恵子は「商売の話」を始め、自分の愛読書である「南総里見八犬伝」について説明。「神作家と言えば馬琴先生」と切り出し、「その馬琴先生が、版元の蔦屋重三郎と組んで、いくらお稼ぎになったか知ってますか?」と畳みかける。

 さらには万太郎について「我が家の主も、馬琴先生に劣らぬ大植物学者でございます」と大見得を切り、万太郎が取り組んでいる日本植物図誌が売れれば、借金などたやすく返せると主張。さらに200円の借金を申し込み、刊行の暁には磯部の名前を謝辞に刻むとの殺し文句で、説き伏せたのであった。

「寿恵子が言及した版元の蔦屋重三郎は実在の人物で、いわば出版プロデューサー的な存在。戯作者として仕事を始めたばかりの馬琴を見出し、自らの手代に雇うことで生活面をサポートしていました。ただ実際に馬琴と蔦屋重三郎が関係していた時期は『南総里見八犬伝』の刊行よりもはるかに前だったのです」(テレビ誌ライター)

 馬琴が蔦屋重三郎に雇われたのは26歳の時で、30歳ごろから本格的な創作活動を開始。「南総里見八犬伝」を刊行し始めたのはは40歳半ばになってからだ。

 一方で蔦屋重三郎は馬琴が31歳だった寛政9年(1797年)に48歳で病没。実のところ、馬琴が蔦屋重三郎と組んで大稼ぎしていた史実は存在しないのである。

「これを考証ミスと捉えるのは早計で、おそらくは寿恵子が借金取りを説き伏せるために大ぼらを吹いたというのが真相でしょう。そんなホラを吹けるほどに寿恵子は金銭面に長けた人物だったことを、今回は描きたかったのではないでしょうか」(前出・テレビ誌ライター)

 寿恵子のモデルで牧野富太郎博士の妻だった寿衛子は、自ら料理屋を経営することで家計を支えていたという。そんな場面も今後描かれるのか。浜辺が演じる寿恵子の手腕に今後も期待が高まりそうだ。

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