この時代の女子として、相当高い教育を受けていたことは間違いないようだ。
8月17日に放送されたNHK連続テレビ小説「らんまん」第99回では、高等女学校の校長職を罷免された田邊教授(要潤)が、妻の聡子(中田青渚)による説得を受け入れ、「ありがとう」と礼を言うシーンが描かれた。
これまで聡子は夫に従順な若妻として描かれてきたが、この日は校長罷免に荒れ狂う田邊教授を諫め、これで学問の道に戻れると説得。過去に見聞した情報をもとに正道を説き、夫の乱心を抑える姿には、教養と慈愛が満ち溢れていたのである。
「聡子自身も最初からこれほど夫に対して強く出られたわけではありません。田邊教授のもとで植物学を研究してきた主人公の万太郎(神木隆之介)は、妻・寿恵子(浜辺美波)による強力なサポートを得て研究に没頭。そんな寿恵子が万太郎を支える姿や愛情の発露を目の当たりにしたことで、妻としての在り方を学んだのでしょう。しかも女学校を辞めて孤独になっていた聡子にとって、寿恵子は数少ない大事な友達。自分の信念を貫こうとする姿もまた、友達の寿恵子から学んだものでした」(テレビ誌ライター)
そういった妻としての在り方に加えて、聡子自身も田邊教授を支えるのに必要な背景を備えていた。先妻を亡くした田邊教授に見初められたことで、女学校を辞めていた聡子だが、どうやら彼女自身は女学校でかなり高い教育を受けていた様子なのだ。
7月28日放送の第85回には、田邊教授の後見人的な存在である森有礼が登場。その後、内閣の発足に伴って初代の文部大臣となり、商法講習所(現・一橋大学)を創設するなど日本の教育行政に大きな影響を与えた人物だ。
森は田邊教授を「自分の右腕」と語り、アメリカに随行させた田邊がコーネル大学に入学したいきさつなどを説明。「Isn’t he amazing!」(彼は驚くべき人物だ!)などと英語交じりで話しつつ、当時の思い出や現在の教育情勢などについて語っていた。
さらには聡子に「Do you have some wine?」(ワインはあるかね?)と訊ねると、聡子は聞き返すわけでもなく「はい、ただいま」と応じていた。すなわち彼女は森の英語を理解していたのである。
「明治半ばの二十代女性で、政治や留学の話を理解し、英語まで聞き取れるとは、相当に高い教育を受けてきたことは間違いありません。初登場時には何も知らないお嬢さんのように描かれていた聡子ですが、それは慎み深さの表れであり、実際にはかなり聡明な女性であることは明らか。そんな聡子が妻としての強さまで発揮した今回、田邊教授にとって欠くことのできない『人生の右腕』であることがあらためて明らかになったのではないでしょうか」(前出・テレビ誌ライター)
視聴者の間にも密かにファンの多い聡子。聡明で美しい女学生を見初めた田邊教授の選球眼は、かなり鋭かったようだ。