いればいたで鬱陶しいが、いなければいないで寂しい。そんなアンビバレンツな想いを抱く視聴者も少なくないようだ。
8月20日深夜に放送された「世界陸上2023 ブダペスト」(TBS系)にて、日本代表のサニブラウン・ハキームが男子100メートルの決勝に出場。五輪も含めて日本人史上最高タイとなる6位でフィニッシュした。
「サニブラウンが6位入賞を果たした時、ネット上では《織田裕二の「サニ!」聞きたかったなあ》《なんか物足りない》といった声もあがっていました。ただ一方では選手にスポットライトが当たるべきスポーツ中継で、キャスターのほうが目立つ風潮に不満を抱いていた陸上ファンも多く、《やっとまともな中継になった》と安どする声も少なくありません」(スポーツライター)
織田裕二は1997年大会から13大会連続で、番組のキャスターを担当。熱すぎるリアクションと絶叫で世界陸上を盛り上げてきた。その一方ではファン気分丸出しの態度が陸上ファンの反感を買い、<織田裕二要らない>の批判も定番に。そして今回、実に14大会ぶりとなる「織田裕二ロス」となっていたのである。
今回のブダペスト大会ではTBSの江藤愛アナと石井大裕アナが総合司会を務めており、その落ち着いた実況ぶりは概ね好評。Qちゃんこと高橋尚子の安定した解説もあいまって、競技に集中して楽しめるとの声も多い。
だが一方では、<世界陸上にはやはり織田裕二が必要だった>との声もあがっているという。それはサニブラウンなど有力選手が登場するシーンではなく、むしろ日本人選手が活躍できなかった場面で顕著だというのだ。
「日本中距離界で期待の星として人気の田中希実選手は、8月20日深夜に放送された女子1500メートル準決勝の第1組に出場。決勝進出を期待されたものの、最下位に終わりました。レース終盤、もはや決勝進出が絶望的になった時点で中継も盛り下がってしまい、お茶の間にはため息が広がることに。こういう時こそ、カラ元気で場を盛り上げる織田裕二が必要だったんだと、あらためて実感する陸上ファンも少なくなかったのです」(前出・スポーツライター)
今回のテレビ中継ではどうしても日本人有力選手の紹介がメインとなり、世界各国の超人的選手があまり取り上げられていないとの声もある。
以前なら織田が「注目の選手」を大げさなほどに持ち上げ、そのスゴさを強調。それが番組の演出上、良いスパイスになっていたというのだ。
「今大会ではサニブラウンの活躍に加えて、男子110mハードルでは泉谷駿介選手と高山峻野選手が予選を突破。男子走り高跳びの赤松諒一選手も決勝進出を決めるなど明るいニュースが続いています。しかし全体的に見れば好成績を収めている日本人選手は数えるほどにすぎないのもまた事実。TBSの中継が日本人選手の活躍に依存すればするほど、エンターテイメント的には盛り上がらないスポーツ番組となってしまう恐れが高いのです」(前出・スポーツライター)
そんな「日本人スター選手」の少ない世界陸上において、13大会にもわたって番組を盛り上げてきたのは織田の功績とも言えるだろう。果たして織田不在のブダペスト大会はどこまで試合中継が盛り上がるのか。8月27日の最終日まで、視聴者の興味が持続することを祈るばかりだ。