娘が泣けなくても、代わりに孫がなく。そんな関係性に視聴者は胸を打たれていたようだ。
8月21日に再放送されたNHK連続テレビ小説「あまちゃん」第121回では、緊急手術した夏(宮本信子)の病院を娘の春子(小泉今日子)が訪問。一方で孫のアキ(能年玲奈)は映画のオーディションで、夏を想って慟哭していた。
18歳で家出した春子は夏の無事を願う病院にて、夏が東京旅行の際に橋幸夫に会っていたことを知ることに。その事実どころか、夏がかつて橋と一緒に歌った経験があることや、橋の大ファンだったことも知らなかった自分に驚いていた。
夏の「母親以外の部分」をちっとも知らないことに気が付いた春子は「どうしよう…もしこのまま目覚めなかったら、私、夏さんのこと知らなさすぎて泣けないわ」と告白。あえて「泣けないわ」という言葉を使うことで、春子は母親の夏に対して抱いている無念さを表していたのだった。
「その時、映画『潮騒のメモリー』のオーディションを受けているアキは『母ちゃん、親孝行できなくてごめんなさい!』とのセリフを口に。あくまで審査の一環ながら、夏ばっぱに思いを馳せるアキは、そのセリフに自分の感情を込めていました。あまりに真に迫ったこの場面に、思わず涙する視聴者も少なくなかったようです」(テレビ誌ライター)
祖母の危機に際し、駆け付けた娘は茫然とし、遠く離れた孫が代わりに号泣する。そんな母娘三代にわたる愛情の描写に、多くの視聴者は心を打たれていたことだろう。
病院に詰めかけた夏の海女仲間たちは思わず、夏が大好きだった楽曲「いつでも夢を」を口ずさんでいた。かつて春子はこの歌が大嫌いだったと明かしていたが、橋幸夫と吉永小百合のデュエット曲であり、19歳の夏が橋と一緒に歌ったこの歌こそ、虹の橋を渡らんとしている夏を呼び戻すためには絶好の曲に違いない。
そして、そんな「いつでも夢を」の歌詞には、少しばかり明るい未来が見え隠れしているというのだ。それは
はかない涙を うれしい涙に♪あの娘はかえる 歌声で♪
という最後の部分にあるという。
「夏・春子・アキの3人を繋ぐ重要なアイテムが、まさに『歌』なのです。夏はかつて橋幸夫とデュエットし、それを一生の思い出にしていました。歌手志望だった春子はその夢こそ叶わなかったものの、楽曲『潮騒のメモリー』では女優・鈴鹿ひろ美(薬師丸ひろ子)の代役を務め、その歌声は今でも聴き継がれています。そしてアキは、母親が主題歌を歌った映画のオーディションに挑戦中。3人を繋ぐ歌の力により夏の緊急手術というはかない場面がきっと、うれしい場面へとかわるのではないでしょうか」(前出・テレビ誌ライター)
アキがオーディションに挑戦している映画「潮騒のメモリー」では、誰が主題歌を歌うのかがまだ明かされていない。誰が歌うにせよ、その歌声がみんなの涙をうれしい涙にかえてくれるに違いないだろう。