この光景、昔にマンガで観たことがあるぞ…。そう感じた野球ファンも少なくなかったようだ。
夏の甲子園にて8月23日、神奈川県代表の慶應義塾高が宮城県代表の仙台育英高校を下し、107年ぶりの優勝を飾った。
今大会での慶應チームを巡っては「髪型自由」が注目を浴びることに。さらには花巻東や土浦日大といった有力校でも「脱丸刈り」を採用しており、準決勝の慶應対土浦日大戦は「髪型自由対決」としても話題になっていた。
そんな髪型の話題も相まって今回の甲子園では「令和の高校球児」という言葉も広く使われていたものだが、一部の野球ファンからは、40年にはすでに今回の髪型事情が予言されていたとの指摘もあるようだ。
「その予言とはずばり、マンガ『タッチ』のことです。1981年~1986年に週刊少年サンデーで連載され、累計2億部という野球マンガの金字塔として知られる同作では、まるで慶應対土浦日大がごとくの“髪型自由対決”が描かれていました」(スポーツライター)
主人公の上杉達也が通う明青学園は、強豪校でありながら野球部は髪型が自由。作者のあだち充が熱血スポ根を否定していたことも相まって、汗と泥にまみれた野球部という古臭い描写とは一線を画している。これは昭和の野球マンガとしては異例中の異例だと言えるだろう。
作品の終盤で明青学園は、甲子園出場を懸けた地区大会の決勝戦で須見工と対戦。須見工のサード新田は地区最強の打者だ。ところが須見工も髪型は自由なようで、新田はヘルメットの後ろから髪が肩までかかるほどにハミ出しているロン毛キャラだったのである。
「昭和の時代に髪型自由の野球部同士が地区大会の決勝戦で対決することなどまずありえませんでした。それでも当時の読者は登場人物の髪型に違和感を覚えることもなく、ひたすらに試合の緊迫感に手を汗握って興奮していたものです。そんな『タッチ』の名場面はそのまま、今回の慶應対土浦日大に置き換えることができそうもの。昭和ばりばりの1980年代に令和の高校野球を予言していたとして、『タッチ』が再注目を浴びているのも納得でしょう」(前出・スポーツライター)
ちなみにタッチの続編を描いたアニメでは、主人公の達也が大学に進学後、独立系のマイナーリーグで投げ続けている姿が描かれていた。一方で甲子園で優勝を果たした慶應の選手たちは将来の目標として、弁護士や会社社長を挙げる部員が多かったという。
そのアニメ版に原作者のあだち充はノータッチだったのとのこと。もしあだちが関わっていたら、達也も弁護士を目指していたのかもしれない。