ドイツ留学を経て、すっかり西洋かぶれになって帰ってきたようだ。
8月28日放送のNHK連続テレビ小説「らんまん」第106回では、主人公の万太郎(神木隆之介)が帝国大学の植物学教室にて助手として採用されることに。7年ぶりに彼を呼び戻したのは、徳永教授(田中哲司)だった。
万太郎が植物学教室に出入りしていた当時、助教授だった徳永はドイツ留学を決意。ヨーロッパで先端の植物学に触れ、日本がいかに遅れていたのかを思い知らされたのだった。そんな徳永の教授室には、彼がドイツから受けた影響が如実に表れていたというのである。
「窓際にはくるみ割り人形が置かれていました。これはドイツ留学の思い出と言えるもので、留学や海外駐在の経験者なら現地に縁のある物を置いておくのはよくあること。その一方で徳永教授が座る席の背後には大きな肖像画が飾られていました。それは尊敬する大物研究者などではなく、誰あろう、徳永教授本人の自画像だったのです」(テレビ誌ライター)
よもや自分の自画像を飾るとは、なんたる自尊心の表れか。これが自画像ではなく自分の写真だとしたら、その異様さも理解できるというものだ。
なぜわざわざ自画像を飾るのか。ひとつにはドイツ留学で日本人として感じた屈辱感の裏返しかもしれない。そしてもう一つは徳永自身の心情の表れだというのである。それは自画像に描き添えられた花に込められているというのだ。
「徳永教授の自画像には、彼の大好きな夕顔も描かれています。自分の好きな花を一緒に描いてもらうこと自体は納得できますが、夕顔の花言葉は『はかない恋』や『夜の思い出』といったもの。一方で源氏物語に夕顔が登場することから日本では『魅惑の人』といった花言葉も知られています」(前出・テレビ誌ライター)
徳永教授が込めた意味が前者であれば、ドイツで感じた否定的な感情の表れかもしれない。だが教授が夕顔を愛する理由は、かつて文学を志していた時に源氏物語が好きだったから。つまり彼にとっての夕顔は「魅惑の人」という意味の表れなのだろう。
魅惑の人と一緒にいたい。そんな思いが肖像画に込められているのであれば、徳永教授にとって誰が魅惑の人なのか。わざわざ7年越しに呼び戻した万太郎が意中の人物なのか。その答えはこれからの展開で知ることができるのかもしれない。