我を通しすぎる性格はどうにも直らないようだ。
8月30日放送のNHK連続テレビ小説「らんまん」第108回では、主人公の万太郎(神木隆之介)が台湾調査団に選ばれ、基隆に到着。現地案内人の陳志明(朝井大智)に覚えたての台湾語で挨拶する様子が描かれた。
日本統治下にある台湾では日本語が共通言語とされており、日本人が現地の言葉を使うのは禁忌。出発前に陸軍の恩田大佐(近藤公園)から含められていたが、常に自分の考えを押し通す独善的な性格の万太郎は、お構いなしだ。
「万太郎のモデルである牧野富太郎博士もやはり、台湾調査団の一員として現地を訪れています。ただ、万太郎が軍の命令を破ってピストルを購入しなかったのに対し、牧野博士はしっかりとピストルを携行していました。当時の世情を考えれば軍の命令に背いて台湾に行くことなど考えられませんが、本作では万太郎の直情的な性格を描くために、その部分は創作要素で進めるようです」(テレビ誌ライター)
ピストルを持たないという判断が万太郎の命取りになるのか。それだけではなく、あえて台湾語でやり取りするという態度自体が、彼にとっては決して賢明な判断ではなかったというのである。
陳に台湾語で名前を訊ね、日本語読みの「ちんしめい」ではなく、「ダァン・ジーミン」が本当の読み方だと知った万太郎。作中ではおそらくジーミンさんなどと呼んでいくのだろう。
だが台湾語で話しかけられていた陳は最初こそ驚きの笑顔を見せていたが、いざ植物採集に出発しようとするときには明らかに表情を曇らせていたのだった。
「その表情を巡って視聴者からは、陳の難しい立場を理解しようとしない万太郎への批判が続出しています。それに加えて陳自身が万太郎のことを怪しんでいる可能性も小さくありません。日本語を徹底させようという明治政府の意向に反して、あえて台湾語で会話しようとする万太郎は、現地の台湾人から見れば反日活動家の動向を探ろうとするスパイに見えても不思議はありませんからね」(前出・テレビ誌ライター)
万太郎の行動にはどうにも思慮に欠けがちだ。今回の台湾語にしても、彼のなかでは植物採集という目的における最適解なのは明らか。しかし、他者からどう見えるのかという客観的な視点は皆無なのである。
果たして台湾語を操る万太郎を、陳はどう捉えているのか。さすがに台湾で万太郎が客死するようなことはないにせよ、軍にはもちろん現地の人からも怪しい目で見られる可能性は小さくない。果たして今回の台湾調査の旅はハッピーエンドに終わるのか。視聴者としても心配が募るばかりだろう。