残り2回まできてようやく、腑に落ちた視聴者もいたようだ。
9月28日放送のNHK連続テレビ小説「らんまん」第129回では、翌日に最終回を控えるなか、これまで作品を飾ってきたキャラクターたちが次々と登場。いよいよ大団円を迎える雰囲気が盛り上がってきた。
主人公の万太郎(神木隆之介)は、日本中の植物を網羅した図鑑の完成にまい進。理学博士号も授与され、植物学者として充実した人生を送るなか、妻の寿恵子(浜辺美波)が重い病に侵されていることが判明した。
医者には診せたものの原因も治療法も分からないとのことで、万太郎は子供たちに「みんなお母ちゃんを支えてくれんか」と告げていた。一方で万太郎は「わしも、なんとかしたち間に合わせんと」と、図鑑の完成を急いだのである。
「そのセリフに、妻が病に侵されていてもなお図鑑の完成を優先するのか! と憤った視聴者も多かったことでしょう。万太郎が植物に懸ける情熱は異常なほどで、時には妻や子供たちよりも植物のほうを大切にしているのではと思わせるほど。そんな異常な植物愛がゆえに、主人公であるにもかかわらず、万太郎に感情移入できないという視聴者も少なくなかったのです」(テレビ誌ライター)
いつも寿恵子に対して「寿恵ちゃん、キレイだ」などと歯の浮くようなセリフを連発しつつも、経済的に困窮しようが、関東大震災で自宅が倒壊しようが、家族よりも植物を優先してきた万太郎。
なぜそんな万太郎に、寿恵子はついていくのか。いくら夫婦に関する価値観が現代とは違うとはいえ、自ら商売を始めて成功させるような気概のある寿恵子なら、夫から自立しても不思議はなさそうなものだ。
だが今回、寿恵子がふと漏らした一言に、彼女が万太郎を支え続ける真意が見え隠れしていたというのである。
「万太郎の家には技術者の広瀬佑一郎(中村蒼)や作家の堀井丈之助(山脇辰哉)など、旧知の人物たちが次々と集結。図鑑の完成に向け作業を手伝うようになりました。そんな客人たちをもてなすためおにぎりを作ろうとする寿恵子。娘の千鶴(本田望結)が制しようとすると、寿恵子は『昔からそうだったのよ』と返していたのです」(前出・テレビ誌ライター)
ここで寿恵子は、自分が差し入れを作りたいと語りつつ、「そしたらお母ちゃんも、研究の一員になれたみたいでしょ」との真意を吐露していた。
出会いの時から万太郎を、植物に人生を懸けた人として好きになっていた寿恵子。彼女にとって万太郎の研究をサポートすることは、夫婦愛の表れそのものだったのである。だからこそ何があろうとも万太郎の研究を支え、待合茶屋を開店することで金銭的なサポートまで行ってきた。
そんな寿恵子の想いを知るからこそ、万太郎は何よりも図鑑の完成を急いでいた。それこそが寿恵子に感謝する最良の方法だということを万太郎は知っていたのである。かなり変わった夫婦の形ではあるものの、そこには深い夫婦愛が見いだせたのではないだろうか。