どこまでが劇中劇なのか。視聴者もすっかり混乱していたようだ。
1月16日放送のNHK連続テレビ小説「ブギウギ」第73回では、ヒロインのスズ子(趣里)が喜劇王・タナケン(生瀬勝久)との舞台稽古をスタート。慣れない演技に取り組むも、タナケンからは「どうもしっくりこない」と苦言を呈される始末だった。
「作中ではスズ子が『舞台よ!踊れ!』という舞台に挑戦。スズ子のモデルである笠置シヅ子は昭和21年、喜劇王・エノケンこと榎本健一と『舞台は回る』で初共演し、その後もエノケンの舞台に数多く出演しました。つまりスズ子とタナケンの共演は今後の展開に大きく影響する大事な場面なのですが、タナケンのみならず視聴者のほうも、スズ子の演技にはしっくりこなかったというのです」(テレビ誌ライター)
歌とダンスでは人気者でも、演技経験のないスズ子の初稽古がイマイチだったのは当然だろう。だが視聴者がしっくりこなかったのはスズ子ではなく、スズ子を演じる趣里の演技にあったというのだ。
スズ子との面談では口数の少なかったタナケンだが、稽古が始まると一変して饒舌に。喜劇王の呼び名にふさわしい演技には、視聴者も圧倒されていた。その一方で、稽古を止めて「セリフもっと詰めて、歯切れよく」と指示する場面では、急に素に戻る姿が印象的。タナケンを演じる生瀬は、劇中劇と平場の演技を鮮やかに使い分けていたのである。
「それに対してスズ子を演じる趣里は、劇中劇と平場が一緒に見える有様。スズ子だけを見ていると、どこまでが劇中劇で、どこから素のスズ子なのか、見分けがつきません。芸能生活40年超の生瀬と比べるのは酷とはいえ、趣里に関しては当初から《演技がわざとらしい》《ヒロイン役は重荷では》との批判も絶えないもの。それが劇中劇のシーンで浮き彫りになった形ではないでしょうか」(テレビ誌ライター)
東京出身の趣里が、大阪弁での演技を求められる難しさはあるだろう。しかしタナケンを演じている生瀬は兵庫出身で、同志社大学卒業後も30代までは関西を中心に活動していた。視聴者からは<東西が入れ替わっている>との指摘もあったが、その声を趣里はどう受け止めるのだろうか。