愛助はそんな自分勝手な男じゃない! 視聴者から怒りの声が続出しているようだ。
2月2日放送のNHK連続テレビ小説「ブギウギ」第86回では、長女を出産したヒロインのスズ子(趣里)が、愛助(水上恒司)の死を知らされることに。言葉を発せられないほど落ち込んでしまった彼女のもとに、大阪から社長秘書の矢崎(三浦誠己)が訪れ、愛助がスズ子名義で遺してくれた預金通帳を渡していた。
さらに矢崎は、愛助が最後の力を振り絞って書いた手紙も持参。その手紙には「生まれてくる子が男の子やったら、名前はカブトにしてください」「女の子やったら、名前は愛子にしてください」との遺言がしたためられていたのだった。
その手紙に号泣したスズ子は、我が子の泣き声を聞くと「愛子! 愛子!」と、愛助が付けてくれた名前で娘を呼ぶことに。愛助への愛情と母親としての愛情があふれ出るシーンとなっていた。ところがこの場面に視聴者が憤慨していたというのである。
「スズ子のモデルである歌手の笠置シヅ子も、今回のストーリーと同様に、恋人だった吉本穎右氏からの預金通帳を受け取っていました。その名義が生まれてくるであろう子供の名前になっていたのですが、作中では通帳名義ではなく手紙で名前を知らせたことになっています。その脚色自体は別に構いませんが、問題は愛助が提案した名前にあったのです」(芸能ライター)
穎右氏は女の子が生まれた場合は、自身の名前から一文字与えた「ヱイ子」にするように希望。作中ではそのエピソードになぞらって「愛子」にした形だ。
それに対して男の子の場合は、シヅ子の名前にあやかって「静男」にするよう指示。それゆえ作中では「鈴男」となるはずだが、なぜか「かぶと」という似ても似つかない名前になっていたのである。
「しかも作中では手紙の肝心な部分が映っておらず『かぶと』の漢字表記が分からないため、字幕では『カブト』とカナ表記になっていました。これだと息子の名前は『花田カブト』になってしまい、ぱっと見では人の名前とは思えないほど。なぜ史実に従って『花田鈴男』にしなかったのか、脚色の狙いがまったくもって意味不明なのです」(前出・芸能ライター)
愛助はカブトと命名する理由について「僕みたいに弱い子になってほしないから」と綴っていた。一方で愛子については「愛助の“愛”は愛にあふれた子になるように付けた字」という由来から、それを娘にも受け継いでもらいたいという。
しかしこの説明では、愛助がスズ子に対して抱いていた愛情が消え去っているではないか。本来は男の子なら母親から、女の子なら父親から一文字を受け継ぐことで、親の愛情を子に伝えるというのが笠置シヅ子を遺して先だった穎右氏の想いだったはず。それが作中ではすっかり消え去ってしまっていたのである。
「しかも、弱い子になってほしくないからカブトという理由も謎です。作中ではさんざん戦争反対のメッセージを随所に見せておきながら、いざ子供に命名する場面で兵隊の装備である『兜(かぶと)』を持ち出すなど、愛助が考え付くものでしょうか。ストーリーの一貫性さえ損ねてしまう無粋な脚色だと糾弾せざるを得ません」(前出・芸能ライター)
実在した人物の遺志さえ脚色してしまったこの場面、いったい制作陣はどんな思いでこの脚本にしたのか。視聴者が呆れ果てるのも無理はないだろう。