この大事な場面に、なぜこんな安っぽい衣装を着せるのか…。呆れ果てる視聴者も少なくないようだ。
3月8日放送のNHK連続テレビ小説「ブギウギ」第111回では、亀吉(柳葉敏郎)の葬儀が故郷の香川で行われた。ヒロインで娘のスズ子(趣里)も喪服姿となり、葬儀に参列。そこに現れたのが、スズ子の生みの親であるキヌ(中越典子)だった。
キヌと15年ぶりに再会したスズ子は、離れた場所にキヌを連れ出し、葬儀に参列してくれたお礼を述べるなど、つかの間の母娘再会を果たしていた。
キヌが息子たちと共に帰ろうとした際、まだ幼い娘の愛子は「あのおばあちゃんは誰?」とスズ子に質問。するとスズ子は「マミーのマミーや」と本当のことを口にしたのだった。
「視聴者のなかには『それ、言っちゃうの?』と驚いた人も多かったことでしょう。愛子の前でそれを口にすることは、亀吉が実の祖父でないことを明かすも同然だからです。一方ではスズ子の言葉を聞いたキヌが思わず落涙し、振り返ってほんの少しだけ微笑んだ姿には、涙を誘われる人も多かったことでしょう」(テレビ誌ライター)
物語の筋書き的には疑問の残る場面ではあるものの、そこはキヌを演じる中越の演技力で見事にカバーしたのではないか。ヒロインを支える脇役に高い演技力を持つ演者を揃えている本作では、こういった場面も少なくないようだ。
視聴者としてはそういった演技に没入し、感動を味わいたいところだろう。だが作中で露呈したいい加減な演出が大きなノイズとなり、すっかり白けてしまったという声もあがっているのである。
「スズ子やキヌは和服を身に着けており、鼻緒が葬式用の黒ではなく白なのは気になったものの、そこはまだスルーできるところです。しかし、さすがに看過できないのは和服に付けられた家紋。なんと二人とも貼り紋、すなわち家紋シールを貼り付けていたのですから、あまりもの手抜きに怒りさえこみ上げてきました」(前出・テレビ誌ライター)
そもそも家紋シール自体が昭和26年に存在していたとは思えないうえ、スズ子は時代を代表する大スター歌手。長者番付の上位に載るほどの富裕層でもあった。そんな人物がよもや、自らの家紋をシールで済ませることなどあり得ようか。
しかもキヌの和装では、スズ子が「ほな、また」と声をかけた時に、半分剥がれかけていたのが見えていたほど。その後のシーンでは貼り直されていたようだが、こんな凡ミスを撮り直さないとは、制作陣が家紋を重視していない姿勢が露呈していたのである。
「そのわりにはスズ子の紋は花菱となっており、これは義実家の花田家にちなんだものでしょう。またキヌの家紋が五三の桐だったのに対して、息子たちの和服には下り藤らしき家紋が付いていました。これは女性の場合、嫁入り前に作った和服は実家の紋のままで良いという風習があるから。そういった点にはちゃんとこだわっているのに、肝心の紋そのものをシールで済ませるのは理解できませんね」(前出・テレビ誌ライター)
神は細部に宿るというが、どうやら本作の制作陣はさほど細部へのこだわりがないようだ。