セクハラ、パワハラが社会問題となって久しく、それを告発するような作品が邦画・洋画問わずに公開されている。本作もハラスメントや女性差別を題材にした、注目のオーストラリア映画。元ネタは、女性バックパッカー2人が住み込みで働く先で受けたハラスメントを描いた2016年のドキュメンタリー作。「アシスタント」(19年)でコンビを組んだ気鋭の監督、キティ・グリーンと新進女優ジュリア・ガーナーが、再びタッグを組んでいるのも興味深い。
ハンナ(ジュリア)とリヴ(ジェシカ・ヘンウィック)は親友同士。カナダからバックパッカーとして訪れたオーストラリアで金欠となり、荒野の真ん中にある古びたパブ「ロイヤルホテル」に住み込みで働くこととなる。しかし、彼女たちを待ち受けていたのは、飲んだくれのオーナー、ビリー(ヒューゴ・ウィーヴィング)や炭鉱で働く荒くれ男たちによるハラスメントの連続だった─。
接客業の女性が“飲酒文化”の中で理不尽な扱いを受ける例は、古今東西、枚挙に暇がない。私も“飲み屋のオネーちゃん”好きなので、映画の中で、パツキンのジュリア嬢をからかって悪態醜態をさらす男どもと大差がないのかもしれない。観ていて、ガマの油のような冷や汗がタラリだった。とはいえ、愚かな酔客たちを糾弾する一方的な作りではなく、女性同士の仲間割れも含め「議論を巻き起こしたかった」という監督の意図は明快。我慢の限界を越えたヒロインが起こすクライマックスの過激な行動は見ものである。
「酔客のハラスメントも水商売の給金のうちという時代ではない」
と改めて知る思いだ。
本作を反面教師とすれば、きっとあなたも“お店”でモテる?
秋本鉄次(あきもと・てつじ):1952年生まれ、山口県出身。映画評論家。「キネマ旬報」などで映画コラムを連載中。近著に「パツキン一筋50年」(キネマ旬報社)。