来年1月10日公開の「劇映画 孤独のグルメ」で主演に加えて初めて監督、脚本を務める松重豊。主題歌「空腹と俺」はロックバンド「ザ・クロマニヨンズ」の甲本ヒロトが書き下ろした。
松重は1982年に明治大学文学部に入学するため福岡から映画監督を夢見て上京。ほどなくして下宿先の近所にあった東京・下北沢のいわゆる「町中華」の料理店「珉亭(みんてい)」でバイトを始めるが、ヒロトもまた、同日同店でバイトを開始。2人がバイト仲間だったことを知る人は多いのではないだろうか。
松重は2022年に今作で初監督をすることが決まった時点で「主題歌はやっぱりどうしてもヒロトが書いてくれたらうれしいっていうラブレターを書いてオファーをしました」と明かしている。現在61歳の2人は19歳で出会い、映画を撮りたかった松重と、バンドをしたくて岡山から上京してきたヒロトは、見事にそれぞれの夢を叶えている。
かつて松重は、ヒロトを主演に据えた自主映画を撮影していたこともあったが、諸事情で頓挫。映画監督にはなれないと夢を封印したこともあったそうだ。だからこそ、自身が初めて監督する映画の主題歌をヒロトにお願いしたかったのだろう。
その当時の松重とヒロトが知ったら、まさか40年後にこんなかたちで2人が一緒に1つの作品を手がけるなんて、かなりびっくりすると思われる。10月31日に公開された「日刊スポーツ」のネット記事によると、ヒロトは「豊の作品に、いっちょ、かめたっていう喜びはありました。初めて会った時、東京に何しに来たんだと聞いたら『映画を撮りたい』って言っていました。そして俺は『バンドをしに来た』って言ってたんです。だから夢はずっとかなっている」と話しているから胸が熱くなる。
また、ヒロトは「『孤独のグルメ』の大ファンで『あのドラマはいいぞ!』って周りに話したりしていて。俺が言ったから人気が出たんだと思うよ」と松重の活躍を陰ながら応援していたというから、目頭まで熱くなってくる。
松重が「かわいい」と言われるゆえんは、何歳になってもこういう気持ちを少年少女のように大切にしているところではないだろうか。映画監督になりたくて上京して、その夢を封印することになった映画作品で主演に据えていたヒロトと初監督作品でタッグを組みたくて「ラブレター」を書いただなんて、萌える気持ちを止められない。
(森山いま)