僕にとって食事とは、日々の最大の楽しみであり、体はもちろん、心も同時に癒やすものであり、単なる栄養補給が目的ではありません。摂取しなくたって身体的には何の問題もない(というかむしろ問題のある)「酒」に関してはなおさら。
けれどもつい飲みすぎたり食べすぎたりしてしまい、むしろ翌日のパフォーマンスを大幅に悪くすることも珍しくないのは、酒飲みにとって「あるある」とも言えるでしょう。酒場ライターなんて仕事をしているとなおさらで、編集者さんとの打ち合わせも酒場が多いですし、仕事で1日に居酒屋を2軒3軒とハシゴし、それぞれの店でそれなりに飲み食いしなきゃいけない、なんてことも珍しくありません。それはとっても楽しく、そして何よりありがたいことで、毎度毎度必要以上に飲み食いしすぎてしまったりもするんですが、そんな日々が続けば目に見えて元気がなくなってくる。
そんな時に体が欲するのは、とことん質素な食事なんですよね。僕の中でなんとなく「枯れごはん」と呼んでいるジャンルがあり、要するに、“〇〇という料理名”とも言えないような、家にあるちょこまかとしたおかずを茶碗メシに雑にのせただけみたいな食事。
我が家の定番であるもち麦ごはん(体に良いらしく、プチプチとした食感が楽しい)に、納豆と晩酌のつまみの残りのカクテキをのせたものとか、家のストックでそろそろ食べてしまったほうがいい野菜、たとえばキャベツと玉ねぎをひたすらじっくり弱火で炒めて?油で味つけしたのをのせたものとか、豆腐半丁をのせてだし?油をかけただけの「豆腐丼」とか。そういうものを、あわてずもぐもぐもぐとゆっくり時間をかけて食べていると、あぁ、心身に沁み渡るなぁ…と感じるわけです。ベクトルは真逆ですが、それこそ真夏に渇いたのどへと流しこむビールにも負けないくらい。
最近、その究極とも言えるメニューに気がついてしまいました。我が家では、夕食が汁ものの時以外は大抵、何らかのみそ汁を作ります。まぁ、豆腐+何らかの野菜ってことが多いかな。野菜は何でもよくて。けど、みそ汁って、夕食時に作ってきっちり食べきることって、そんなになくないですか?うちだけかな。微妙な量が残るんですよ。なのでタッパーに入れて冷蔵庫にしまっておく。これがね、意外といい酒のつまみになる。次の晩、新たに別のみそ汁を作って、家族はそれを食べているんだけど、僕は前日の冷えみそ汁をつまみに酒を飲んでいるなんてこともしばしば。これぞみそ汁の永久機関。
…ちょっと話がそれました。その翌日の冷えたみそ汁を、冷たいまま温かいごはんにかけた「冷やしみそ汁がけごはん」。ねこまんまの“あつひや”とも言えるかもしれない。これが、めっっっちゃ沁みるんですよ!え~?とか思うかもしれないけど、もしタイミングがあったら一度やってみてください。そんな時に飲むのは、当然あったかいほうじ茶ですかねぇ。
…って、しまった。ここまで、今回のテーマと何の関係もない話をしてしまった。え~と、僕の元気を出したい時のメシと酒は、地元の東京都練馬区にある「辰巳軒」のカツカレーと瓶ビールです! えっとえっと…もう詳しく書くスペースは残っていないので、機会があったら一度行ってみてくださいね。おいしいよ!
さて次回のテーマ。辰巳軒で思い出したんですが、前にナオさんが「ホームラン軒」というカップ?が大好きだと言っていたのが妙に印象に残っているんですよね。なので「カップ?と酒」でどうでしょうか?
パリッコ:酒場ライター。著書に「酒場っ子」「天国酒場」など多数。スズキナオ氏との酒飲みユニット「酒の穴」としても活動している。「缶チューハイとベビーカー」が絶賛発売中!