正月のゆるゆる歩き旅といえば、七福神めぐり!今年は東京都台東区の下谷七福神めぐりにした。ゆっくり歩いても1時間ほどの適当な距離で、各社寺の見どころも多い。
東京メトロ日比谷線三ノ輪駅からスタート。1b出口を出て、国際通りの東側にある東泉小学校前の寿永寺を目指す。江戸期、尼僧が徳川2代将軍・秀忠の菩提を弔うために立てた草庵が始まりで、弥勒菩薩の化身とされる布袋尊を祀る。
寺の前の通りを上野方面へ進むと、すぐに正宝院がある。1530年の創建でこんな伝説がある。ある日、住職が修験道の聖地・大峯山へ御本尊とともに修行に出た。留守中も地元の人々が御本尊の分身に祈りを捧げていると御本尊が空を飛び、一夜にして元の場所に戻ったとか。以来、飛不動尊と呼ばれ、特に航空関係の人々に信仰されている。七福神は恵比寿様だ。
国際通りを横切り、公園内にある弁天院を参拝。七福神は商売繁盛・学問芸術のご利益で知られる朝日弁財天。社殿前に小さな弁天池がある。
昭和通りを渡り、少し進むと毘沙門天を祀る法昌寺がある。本堂前には独特の前髪と、腹に「めいわくかけてありがとう。」の名言が刻まれた“たこ地蔵尊”が立っていた。元プロボクサーでコメディアンのたこ八郎を偲んで建立されたもので、発起人には由利徹、赤塚不二夫などの著名人たちが名を連ねる。生前、いかに愛されたかがわかった。
七福神ではないが向かいの小野照崎神社にも寄ってみる。ある喜劇役者が大好物を断つので大きな仕事をくださいと祈願したところ、国民的スターになったとか。オイラもひとつ祈願してみようかしら…。
次の英信寺に祀られる三面大黒天には驚いた。正面は打出の小槌と七宝袋を持つおなじみの大黒天だが、顔の右に弁財天、左に毘沙門天の顔があるのだ。京都の圓徳院には豊臣秀吉の持念仏だった三面大黒天が祀られていると聞くが、下谷で同様の大黒様にお会いできるとは思わなかった。
残りは福禄寿と寿老人。福禄寿は初夏の風物詩・朝顔まつりで知られる入谷鬼子母神・真源寺にある。堂内に鎮座する尊像は二頭身の愛らしい姿でほほが緩む。
寿老人は言問通りを日暮里方面に進んだ元三島神社にある。周りはホテルが林立して、ちょっと気恥ずかしい。そそくさと茅の輪をくぐり、石段を登った先の社殿に鎮座する尊像を参拝して終了。今年もいい年になりそうである。
内田晃(うちだ・あきら):自転車での日本一周を機に旅行記者を志す。街道、古道、巡礼道、路地裏など〝歩き取材〟を得意とする。