華々しさはないけれどドラマファンのハートをつかむ作品というものがある。今クールでいえば、上白石萌音主演「法廷のドラゴン」(テレビ東京系)がそれに当たるだろう。
プロ棋士になれなかった主役の天童竜美(上白石萌音)が弁護士資格を取得。「歩田法律事務所」の新人弁護士として試験的に採用されることになり、同事務所の所長・歩田虎太郎(高杉真宙)やパラリーガル兼経理の乾利江(小林聡美)とともに「将棋の定跡」に当てはめた「法廷戦略」で事件を解決していくストーリーだ。
将棋のことを何も知らなくても、なんとなく「そういうことか」と理解できる内容になっているため、非常にまとまっている感じがして見やすいことが爽快だ。上白石と高杉と小林が醸し出す空気感もほっこりして温かく、私は昨年10月期に放送された「嘘解きレトリック」(フジテレビ系)を思い出した。松本穂香演じる「嘘を聞き分けられる能力」を持つ浦部鹿乃子が、鈴鹿央士演じる貧乏探偵・祝左右馬の助手として事件を解決していく温かい爽快感とドラマとしての見やすいまとまり方が、よく似ている気がする。
ゲストを含めた出演者をふわっと包み込む包容力のある演技が、上白石と松本には共通するように思う。この包容力は、高杉や小林、鈴鹿の演技にも感じる特徴だ。刺激は強くない作品だけれど、シリーズ化したら視聴者の裾野が広がりそうな優しさを感じる。遅めの夕食をとりながら家族と一緒に視聴できる感じもいい。
上白石演じる竜美が勝負服として、赤を基調とした和服を着用して法廷に立つシーンも見どころの1つかもしれない。
(津島修子)