3Dプリンターの存在を知ってから、いつかほしいと思いながらもいまだに買えず、現在に至っている。
電卓だって開発された当初は500万円くらいする高価なプロダクトだったけれど、今や100円ショップで販売されているのだから、3Dプリンターだって頑張れば買えるようになるのではないか。そんな夢をひそかに持っていた私だが、「3Dフードプリンター」なるプロダクトの存在を知り、頭を殴られたような衝撃を味わっている。
2017年から山形大学工学部で研究されている「3Dフードプリンター」は、簡単に言ってしまうと食品をペースト状や液体などにしてインクのように使い、改めて別の食品にしてしまうというプロダクトだ。たとえばニンジンを様々な硬さに調理することは簡単なことではない。しかし「3Dフードプリンター」で造形・印刷したニンジンは硬さを調節することが容易なため、「介護の現場」で特に期待されているという。
流動食が必須となった高齢者に、見た目は固形物に見えるけれど、食べれば流動食と同等の柔らかさの食事を提供することも可能になるだろうというから、これは山形大学工学部に開発を頑張ってもらいたい。
また、形や見栄えが悪いことが理由で市場に出回ることのない野菜や果実も、ペースト状や粉末などにして「3Dフードプリンター」に使用できないかと研究されている。昨年12月8日には、「3Dフードプリンター」で造形・印刷された寿司ネタが東京・お台場にある日本科学未来館の来館者たちに試食として提供されるイベントが開催された。
この日、試食用に提供されたのは魚のすり身で作ったタコ。一般の来館者たちからは、「味はタコっぽいけれどカマボコのような食感」などと率直な意見が寄せられ、研究代表者の古川英光氏は「今はまだタコに失礼なレベル。もっと食感は良くしていきたい」とコメントした。
2030年くらいには家庭でも使えるような安価な「3Dフードプリンター」を開発し、2050年には空気中から水分を取り入れる技術や、太陽光発電なども組み合わせた、超小型の「3Dフードプリンター」を内蔵した「スマート弁当箱」といったプロダクトの研究も進めているという古川氏。「人間が想像できることは、人間が必ず実現できる」とは、「SFの父」との異名を持つ小説家のジュール・ヴェルヌが父親への手紙に書いた一節と言われているが定かではない。それでも「スマート弁当箱」で作ったお弁当が美味しいといいなぁ。
(森山いま)=写真はイメージ=