「土ドラ9」と呼ばれる日本テレビ21時放送枠のドラマが3月29日放送の「相続探偵」最終回をもって“廃枠”になってしまった。たった1年間しかなかった枠だけれど、土曜日という平日にはない解放感を味わいながら、同時間帯にほかのドラマ放送がないのでゆったり視聴できる、「好きなドラマ枠」だった。
日テレは22時に放送していたドラマ枠を21時枠に移動させて「土曜ドラマ」を復活させ、この「土ドラ9」がなくなったぶん、水曜22時スタートの「水曜ドラマ」枠が復活する。ん?これの何が問題なの?と思った方にお伝えしたい。
「土曜ドラマ」はかつて「ジャニ枠」と呼ばれていた。これがなくなることが1つ。そして、もう一つは、「水曜ドラマ」はフジテレビの「水10枠ドラマ」とバッティングする、つまり今期で言えば志尊淳と岸井ゆきのがW主演する「恋は闇」(日テレ系)と松本若菜主演「Dr.アシュラ」(フジ系)が丸かぶりしてしまう。これは、非常につらく苦しいのだ。
ともあれ、そんな「土ドラ9」枠の最後を飾ってくれた、ハイエナのような“相続探偵”の灰江七生を演じた主演の赤楚衛二と、灰江(赤楚)をしっかり支える以上の働きをしたハゲタカのような“フリーライター”の羽毛田香を演じた三浦貴大にエールを贈りたい。「相続探偵」のような1話完結型のドラマは、ネット上の「ドラマ実況板」や「X」であまり盛り上がらないのだが、このドラマは後半に向かってどんどん面白くなっていったので、途中離脱した人は完全に損をしたと思う。
特に第7話からハゲタカ(三浦)が活躍するようになってドラマに深みが増し、第8話でハゲタカがすい臓がんで余命3カ月と宣告されてからは、主役がハイエナ(赤楚)からハゲタカに移ったような展開にゾクゾクした。三浦は今や、父親の三浦友和と並ぶか、すでに追い越しているほどの名役者になったと思う。「週刊少年ジャンプ」の掲載マンガに必要な三大原則とされる3要素「友情、努力、勝利」といった“ヒーローキャラ”を演じることは赤楚に任せ、その裏の「裏切り、自堕落、逝去」といった“クズキャラ”を一手に引き受けて演じ切った三浦。実年齢39歳にしてすでに「いぶし銀の魅力」があるように思う。
「二流が二人そろえば二刀流や」という名言を残し、桜の樹の下に永眠したハゲタカを演じ切った三浦の主演作をそろそろまた見たい。
(森山いま)