Q:もうすぐ2歳になる息子がいます。躾(しつけ)としての体罰の是非を教えてください。私は基本的に体罰はせずにやってきたつもりです。ただ、大きくなるにつれ、授乳時に胸の先を強く噛まれた時やひどくぐずった時に、数回ですが、頬やおしりを叩いてしまいました。そのせいなのでしょうか。今は叩いていないのに、保育園のお友達の顔やおしりを日常的に叩くようになってしまいました。強く叩くわけではないのですが、通りすがりにペシッとやるんです。そんなことを息子にしたことはありません。それなのにどうしてそんなことをするのかわからず悩んでいます。
A:息子さんは、単にお母さんがした行為をマネしたのか、それとも元からそういう癖があるのか、もしくは何かの不満が行動に出ているのかを観察しなければいけません。
おっぱいを噛まれるのが痛くて、思わず手が出てしまうことはよくあることです。でも、とっさのことでも首から上を叩くのはやめましょう。
また、育児に“体罰”は決してありません。体罰とは、教育現場で、教師が生徒に対して行きすぎた行為に対する言葉です。このお母さんが体罰と呼んでいることは、育児であれば虐待に相当します。このお母さんが叩くのをすぐに止めたのは、正しい判断だったと思います。
保育園などでお子さんが他の子供に対して、乱暴してしまうことは珍しいことではありません。
保育士によると、園児が手を出した時は、すぐにその場で叩いた子供の手を取って「人を叩いてはいけない」「叩かれたほうは痛いんだ」ということを繰り返し教えるそうです。つまり、“人を叩く行為は悪いこと”だと、すぐに教えるのです。その上で、叩かれた相手がどんなに嫌な気持ちになっているかを代弁して、自分が何をやったのかをわからせるようにしていると聞いています。
通りすがりに友達に手を出してしまう息子さんは、人との距離の取り方、コミュニケーションの方法を間違って覚えてしまった可能性も考えられます。まずは、息子さんをすぐに叱るのではなく、どうしてお友達を叩くのか聞いてみてください。本人には全く悪気はなく、その子に興味があることを示していることを伝える行為なのかもしれません。
であったとしても、叩く行為はいけないことです。友達とのコミュニケーションは、たとえば手をつなぐ、握手するなどから教え、体を叩かれるのはいい気分ではないこと。軽く叩いていたとしても、叩かれた方はイヤな気持ちになること、ひいては息子さんを嫌いになってしまうかもしれないことなどを、根気よく教えていきましょう。
(監修・ストレスケア日比谷クリニック 酒井和夫院長/取材・文 李京榮)