私は普段から寝るのが好きで、睡眠時間が長いほうだと思います。3時間とか4時間も眠れば十分だという人もいて、それはそれで活動時間が長くてうらやましくもあるのですが、私は7時間か8時間は眠りたい。10時間ほど眠る時もよくあります。というか、それぐらい寝ないと元気が出ないんです。そういう意味では「寝るのが好き」というか、「体が長い眠りを必要としている」ということなのかもしれません。
特に長く眠っていたいのが、たくさんお酒を飲んだ日の夜です。寝ている間に体が頑張ってアルコールを分解してくれているんだと思うのですが、翌朝早くから用事があったりして無理に起きると、二日酔いがとにかくひどいんです。たっぷり眠れると二日酔いも軽く済みます。たくさん飲んで、たくさん寝たい。そんな毎日をキープしたいです。東京で会社に勤めていた頃、飲んだ帰りによく電車で寝過ごしました。目が覚めたら知らない駅で、何度も途方に暮れたものです。終点まで行って、帰りの電車はもうない。どこだここ、やけに空気が澄んでいる…。
そういう絶望感を何度も味わってきて、かなり気をつけるようになりました。寝過ごすことも滅多にないですし、飲んでいる途中に眠くなるということもあまりなくなって(そこまで飲めなくなったのかも)、そういう意味では年をとって、飲酒中、あるいは飲酒後の眠気コントロールができるようになってきた感じがします。
と、それは家の外での話。外出先で酔って眠ると、前述の通り知らない駅までワープしたりして身の危険があるわけですが、家で飲んでいる時はその心配がない。それゆえ、酔い潰れて眠るところまで飲んでしまうんですよね。軽めの晩酌という感じで飲み始めたはずが、気づけばガンガン飲んでしまい、目が覚めたら朝で、床の上、みたいな。それで風邪ひいたりして、本当にバカバカしいんですが、眠る寸前まで酒を飲んでいられるというのが幸せなんですよね。帰らなくていい場所で飲むからこそできることです。
その幸せの最たるものが、旅館で飲む酒だと思います。夕飯を食べて温泉に入って、部屋に戻ったら布団が敷かれていて、まだ21時。館内の自販機で買った缶ビールだとか、夜のために買っておいた地酒なんかを並べ、眠る寸前まで飲んでいいっていう、あの至福の喜び…。
数年前、両親や妹たちと久々にみんなで旅行しようという話が持ち上がり、熱海からフェリーに乗って初島という離島に行きました。ちょうど台風が直撃して、行きの船はなんとか出たものの、向こうではもう外に出られるような状況ではなく、ずっとホテルにいました。親も妹たちもみんな酒好きなので、朝から晩までずーっとだらだら飲んでいるだけ。「これだったら別にわざわざ離島まで来る必要はなかったんじゃないか?」とも思うのですが、こういう状況でもないと、そんなにだらだら過ごすことはできないもの。両親の部屋に集まって飲んで、缶や瓶がどんどん空になって、眠くなったらすぐに自分の部屋で寝ていいという、あれは楽しかったな。
そう考えてみると、父が若い頃、よく仕事の仲間を数人集めて旅行に出かけていたのですが、あれはたぶん、行く先の土地に興味があって行ったというより、ただ、気の合う仲間と眠るギリギリまで酒を飲みたかっただけなのではないだろうか。
そんな旅、してみたいなー! パリッコさん、今度、そんな酒飲み旅行を企画しましょうよ! 行く先はもう、どこでもいいので!
さて、次回のテーマなんですが、酒への探求心が旺盛なパリッコさんに聞いてみたい「最近、こんな飲み方をしてみたら楽しかった」で、どうでしょうか!
スズキナオ:東京生まれ、大阪在住のフリーライター。著書に「深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと」「家から5分の旅館に泊まる」他。「大阪環状線 降りて歩いて飲んでみる」がLLCインセクツより絶賛発売中。