ここからは、シリーズ「顔と夢」。「“晴顔”が、夢を創り、そして夢を叶える」、つまり「“夢の実現”は顔しだい」との結論に到達するのです。顔をめぐるサイエンス・アドベンチャーが、いよいよ大詰めを迎えます。
■そもそも“夢”って、いったい何?
私たちが「ユメ」っていう場合、2種類ありますよね。「寝ている時に見る“ゆめ”」と「将来を夢みる“夢”」です。
ここでは「将来を夢みる“夢”」の“顔による実現”がテーマなのですが、実は「寝ていて見る“ゆめ”」もなかなか捨てがたい。おもしろくて不思議なんです。そこで、ちょっと寄り道をしてみたいと思います。
■寝ていて見る“ゆめ”が教えてくれること
寝ている時に見る“ゆめ”は、イヌやネコも見ていると思います。うちの犬は、寝ていても足をピクピク動かしたり、寝言(?)みたいなことを言っていました。これから、寝ていて見る“ゆめ”の不思議なお話をご紹介しましょう。
“ゆめ”には、誰かの死を知らせたり、亡くなった人などのイメージが、時には音声を伴って現れる「夢枕」という不思議な現象があります。これから起きることを知らせる「予知夢」もありますね。宝くじの当たり番号を知らせてくれる「ありがたい“ゆめ”」などもあるようです。
宗教の世界では「“ゆめ”による仏のお告げで悟りを開く」ということも広く行われてきました。そのための施設もあります。文字通り“夢殿”です。そこに100日ぐらい泊まり込み、“ゆめ”をみるのです。横になって寝るのではなく、座ったままで寝ながら“ゆめ”に仏が現れるのを待ちます。浄土真宗を開いた親鸞も比叡山で20年修行した後、京都に出て、聖徳太子ゆかりの“夢殿”六角堂(京都市中京区御池頂法寺)に泊まり、95日目に“ゆめ”で仏の教えを得たといいます。
ま、しかし、そんなすごい“ゆめ”でなくても、「これって何だか以前に経験したことがあるぞ」 という「既視感(デジャヴ)」は多くの人が経験していますし、それが“ゆめ”によってもたらされる場合もあります。私は、こうした“ゆめ”のことを「既視夢(きしむ)」と呼んでいます。
私は「既視夢」を実際に確認したことがあります。「既視夢」で、あらかじめ知っていた出来事を、事前に予言し、その予言は、細部にわたって、後日、その通りに実現したのです。
■“ゆめ”は、「インスピレーション」をもたらす
アメリカの発明家で、ミシンを開発したエリアス・ハウの“ゆめ”体験です。
ハウは「自動的にものを縫う機械“ミシン”」の発想に苦しんでいました。ハウは、“ゆめ”の中で、ある国の王様にミシンの発明を依頼され、タイムリミットに間に合わず処刑されることになってしまいます。その時、彼を連行していく兵士たちが持っていた槍の先に「穴が開いている」のを、ハウは見つけたのです。飛び起きた彼は「先端に穴があいた針」を考案しました。これが現在のミシンの原型になりました。ハウは、まさに“ゆめ”の中でミシンのアイデアをゲットしたのです。
アメリカの200人以上の科学者に対して、「あなたが新しい理論を思いつく時はいつですか?」というアンケートを行ったことがあります。その答えの中で一番多かったのが、「寝ている時」で、全体の半数近い47%の科学者が、「寝ている時に重要なインスピレーションを得る」と答えているのです。
元素の周期律を発見し、周期表を作ったロシアの化学者・メンデレーエフは、“ゆめ”の中でその原型を見ました。そしてそれをもとに周期表を作り上げたのです。驚くべきことに、実際の修正箇所は一つだけだったそうです。
フランスの数学者、ポアンカレは、難解で解けない微分方程式を、学生への講義中に黒板で解いてみせている“ゆめ”を見ました。それは完全に正しい解であったということです。
なぜこんな不思議なことがおきるのでしょうか?次回、その理由を解明します。お楽しみに。
●プロフィール
なかむら・かつひろ1951年山口県岩国市生まれ。早稲田大学卒業後にNHK入局。「サンデースポーツ」「歴史誕生」「報道」「オリンピック」等のキャスターを務め、1996年から「ワイド!スクランブル」(テレビ朝日系)ほか、テレビ東京などでワイドショーを担当。日本作家クラブ会員。著書に「生き方はスポーツマインド」(角川書店)、「山田久志 優しさの配球、強さの制球」(海拓舎)、「逆境をチャンスにする発想と技術」(プレジデント社)、「言葉力による逆発想のススメ」(大学研究双書)などがある。講演 「“顔”とアナウンサー」「アナウンサーのストップ・ウォッチ“歴史館”」「ウィンウィン“説得術”」