不朽の名作漫画「キャンディ・キャンディ」がこの世に産声を上げたのは、今から50年前。少女漫画雑誌「なかよし」で連載スタートしたのが、1975年4月号からだった。
単行本の累計発行部数は1200万部を突破。約2年半(1976年10月1日‐79年2月2日)にも及んでテレビアニメが放映され、お茶の間に愛されたキャンディのキャラクター人形は、最盛期には1年間で200万個、約80億円を売り上げる社会現象に。キャンディにとって重要なキーパーソンとなる「丘の上の王子様」が、まさかあの人だったとは…といったどんでん返しにも驚かされたものだ。
しかしながら、もっとも驚くべきは、2001年以降、本作は再販、再放送、配信がいっさい行われていないといった事態だ。
その原因は、作画者・いがらしゆみこ氏と、原作者・水木杏子氏の間で、著作権を巡る争いが生じたことだ。たとえば、いがらし氏側の関係者の意思のみで、1997年5月、本作の写真シール機が設置されていることが判明し、水木氏が抗議。その後も、97年8月、通販や原画展などで「高級オリジナル現代版画」が販売されたり、同年11月、いがらし氏が、岡山県倉敷市に「いがらしゆみこ美術展」をオープンし、キャラクター商品を発売した。
98年6月にはいがらし氏のみの著作権表示をして、某食品メーカーから「キャンディキャンディ」の飴も発売された。この間、水木氏側は、原作者である自分の許可がないとして、「誰が漫画の著作者であるか」が争点として裁判が行われ、2001年10月、最高裁判所が原作者である水木氏の勝訴を確定。水木氏といがらし氏は事実上の断絶状態に陥ったため、再販、再放送、配信ができない状態になっているのだ。
映像で楽しむことができないのであれば、「ならばせめて…」と中古本をネットで検索したところ、テレビアニメで大河のごとく長編で描かれたあのストーリーが、単行本では9冊だけという事実を再確認。さらに、全9巻が数万円で取引されている…。
女性ならずとも誰もが一度は口ずさんだことだろうテーマソング「キャンディキャンディ」(歌:堀江美都子)。「笑って」を繰り返すあの有名な歌詞のように、キャンディの笑顔を見ることができないと思うと寂しい限りだ。
(所ひで/YouTubeライター)