日頃、つい発してしまう“何気ない一言”って、我が子の成長にネガティブな影響をもたらすことがあります。例えば、気を付けてはいても無意識に言ってしまいがちな「ちゃんと勉強しないとパパみたいになるよ!」という発言です。
家庭を顧みず家事育児に無関心でありながら、昇進できずに給与も上がらない夫……。そんな夫へのイライラが溜まり、ついこんな台詞が口をついて出てしまうことってありますよね。でも実は、動機がどうであれ、これはかなりNGなんです。
「子育てママに知ってほしい ホンモノの自己肯定感」(幻冬舎刊)の著者であり、最先端の心理学および脳科学を融合させて独自の非認知能力開発メソッドを確立したFive Keys代表の井上顕滋さんによれば、「この言葉は、子どもの“パパが大好きな気持ち”と“ママの味方でいたい気持ち”との板挟みになる状態を生んで苦しめる」ことにもなるのだとか。「パパみたいになるよ」という言葉の前提はパパの全否定であり、父親、母親のどちらのことも大好きな子どもの心に“忠誠葛藤”という状態を生み出すそう。
イタリアのG.ダヌンツィオ大学の研究者であるマリア・クリスティーナ・ヴェロッキオ氏と、ノルウェー児童行動発達センターのエイミー・ベイカー博士が行った調査によると、このような忠誠葛藤を生み出す関わりは、子どもの自尊心や大人になってからの幸福度に悪影響があることが示されています。
また、親がこのような言葉と同時に「パパの言うことを聞きなさい」など、子どもの立場からすると相反することに聞こえるメッセージを伝えるとダブルバインド状態となり、他人の感情理解や自分の感情表現などに支障が出てしまったり、外部からの情報をシャットアウトしてしまったりする恐れがあるというのです。
カリフォルニア大学の教授であるタマラ・D・アフィフィ博士とペルシルベニア州立大学のポール・アマト名誉教授が行った研究でも、争いの多い親を持つ子どもは、そうでない子どもよりも両親の間で板挟みになっていると感じる傾向が強く、こうした感情は主観的幸福感の低下や親子関係の質の低下と関連していることが分かっています。
この問題を回避するには、子どもにとって大切な存在を否定する発言をしないことが最も重要です。もしこのような発言を繰り返してきたのであれば、まずは過ちを認めた上で、“パパの素晴らしいところ”を子どもに伝えるのが大切なんだとか。このような関係性を作っておけば、親子間で素直なコミュニケーションができて相互理解もしやすくなり、パパとママへの気持ちの葛藤の状況も起こりにくくなるでしょう。
いかがでしたか? パパの悪口を子どもに言ってストレスを発散しているようなことがあれば、子どもの健全な成長のためにもぜひ考え直してくださいね。