元NHKアナ・中村克洋「人生を動かす“顔”パワー」講座/顔と夢実現⑦思いっきりゴージャスな夢も叶う「注目バイアス」に刮目せよ!
まずは“夢見る高校生”、中村くんと空田(そらだ)くん、2人のケースを、それぞれ考えてみましょう。中村くんの将来の夢は、「アナウンサー」、そして空田くんの夢は「パイロット」です。さて、空田くんは、どんな「ステップイメージ」を描けばいいのでしょうか?空田くんはこう考えるかもしれません。
「パイロットになる方法はいくつかある。パイロットの養成課程のある大学に入学するか、パイロット養成の専門学校もある。自衛官になるという方法もある」
でも、「まず、一般の大学に進学して2年間在学して受験資格を得た後、宮崎にある国立の航空大学校に進学して資格を取って、その後に航空会社に就職するという道が、自分には一番向いている」
この場合、空田くんの頭の中では、大学校での学生生活、練習機で空を自由に飛ぶ快感などの豊かな「航空大学校」のイメージが見えています。空田くんはそれらをステップイメージとして、一つ一つ、できるものから選んで、“マネッシーくん(何でもマネする細胞、ミラーニューロン)”でマネして、実現していきます。
では、“アナウンサーを目指している中村くん”の前には、この「航空大学校のステップイメージ」は存在しなかったのでしょうか。そんなはずはありません。中村くんの目の前にもぶらさがっていた。でも、中村くんには“まるで見えなかった”のです。中村くんは、パイロットになりたいのではなく、アナウンサーになりたいわけですから、「アナウンサーになるための進路」、たとえば、「各大学のアナウンス研究会」「アナウンサーになるための予備校の数々」「銀座のアナウンサー合格に縁起のいい写真館」など、アナウンサーになるためのステップイメージが、ほぼすべて見えていたのです。
それでは逆に、パイロットを目指していた空田くんの前には、「アナウンサーになるためのステップイメージ」は存在しなかったのかといえば、ちゃんとあったはずです。目の前にぶらさがっていたはずですが、彼の夢は「パイロットになること」ですから、空田くんには、全然見えなかった。
これは、心理学の分野では、「注目バイアス」としてよく知られています。つまり、人は、「一度何かに注意を向けると、それに関わるものに頻繁に注目してしまう」のです。
たとえば、「赤い服が欲しい」 という場合。街で見かける人の服装やショウウィンドウの中や信号の赤にまで目が行ってしまう。「赤い服が欲しい」と思わなければ、それほどでもないのに、です。夢も同じです。一度、パイロットを夢として意識すると、パイロットに関するあらゆる情報が目に止まりはじめます。空田くん以外の人は、気がつかないか、完全に無視してしまう情報が、空田くんがパイロットを“夢見た瞬間”から、空田くんには見えてくるのです。
中村くんの「アナウンサーになる夢」を実現する過程についても同じで、この注目バイアスが働くのです。つまり、「“自分の夢”を見さえすれば、その夢の実現に向かう様々なステップイメージが、自動的に意識の中に飛び込んでくる」わけです。「“夢実現”に必要なステップイメージが、次々と“見えてくる”」のです。そしてそれを“人間脳”が、得意の計画能力で、「“夢実現”という“向こう岸”まで、飛び石のように並べてくれる」。私たちは、その飛び石の中から、お気に入りの飛び石(ステップイメージ)を選んで、できるものから一つずつ、着実に渡っていけばいいのです。
こうして、あなたの夢は実現します。「大切なのは“あなたの夢を見ること”」です。思いっきりゴージャスな夢を描いて、それを実現してみてはいかがでしょうか。
次回は、「大谷投手が投げた球を大谷選手が打つ」驚異のバーチャルトレーニングのお話です。
●プロフィール
なかむら・かつひろ1951年山口県岩国市生まれ。早稲田大学卒業後にNHK入局。「サンデースポーツ」「歴史誕生」「報道」「オリンピック」等のキャスターを務め、1996年から「ワイド!スクランブル」(テレビ朝日系)ほか、テレビ東京などでワイドショーを担当。日本作家クラブ会員。著書に「生き方はスポーツマインド」(角川書店)、「山田久志 優しさの配球、強さの制球」(海拓舎)、「逆境をチャンスにする発想と技術」(プレジデント社)、「言葉力による逆発想のススメ」(大学研究双書)などがある。講演 「“顔”とアナウンサー」「アナウンサーのストップ・ウォッチ“歴史館”」「ウィンウィン“説得術”」
