元NHKアナ・中村克洋「人生を動かす“顔”パワー」講座/顔のサイエンス③サルとは違う!「脳とのタッグ」で夢を叶えよう!
■チンパンジーとヒト、“顔コミュニケーション”の差とは
類人猿にも、ヒトほど多くはありませんが、表情筋があります。チンパンジーの場合、相手の10種類以上の顔(表情)から、それぞれの感情を読みとることができるということが確認されています。例えば、口を開き、歯を見せるという顔は「劣位の表情」と呼ばれ、相手に服従する感情を表現します。これは、ヒトの“笑顔”に相当すると考えられています。チンパンジーの子供たちは、これとよく似た顔を、じゃれあう時に見せます。「これはケンカではなく、遊びだよ」ということを“笑顔”で確認し合いながらじゃれているのです。
このように“言葉”をもたないサルたちは、顔によっておたがいの気持ちを伝えあい、自分たちの秩序を維持しています。いわば初歩的な“顔(表情)コミュニケーション”が行われていることになります。
一方、ヒトはどうでしょうか。ヒトは、たくさんの表情筋のお陰で複雑な感情表現が“顔でできる”し、それを、かなり正確に読みとる能力も備えています。だからヒトは顔で、言葉ではなかなか表現できない、喜怒哀楽の微妙なニュアンスまでをも通じ合えるのです。非常に完成度の高い“顔コミュニケーション”ができているのです。
■“ヒトの顔”は進化の集大成
地球に初めて生命が生まれたのは40億年前です。以来、生物は5回の大量絶滅とそれに続く劇的な進化を繰り返し現在に至ります。そんな中で、生存するため、子孫を残すため、生物は何らかの方法で「外部からの情報」を受け取ることが不可欠でした。生き残るために、「危険」や「食料」や「繁殖の相手」などの外部の情報を受けとる必要があったのです。
そういった進化の過程で、触覚、視覚、嗅覚、味覚、聴覚などの五感の道具を1カ所に集中させた、いわゆる“顔”を持つ生物が現れます。そして、あたかもパラボラアンテナを動かすように顔を動かし、すべての方向から情報を受け取るようになりました。
ヒトもその例外ではありません。それどころか“ヒトの顔”は突出して優れています。相手の顔から情報を“受けとる”ばかりか、自分の顔からたくさんの情報を“発信”しはじめたのです。進化の集大成として、発信、受信のあらゆるコミュニケーション機能が凝集したのが、ヒトの顔なのです。ヒトは、表情筋という特殊な筋肉組織を使って、顔の皮膚を自由に動かし、あらゆる感情ときっちり連動した、微細な表情ができる顔を作り上げ、それを使って複雑なメッセージを伝え、受け取ることができる生き物です。“言葉”を持つようになるずっと以前、気の遠くなるような長い時間をかけ、ヒトは、ヒト独特の“顔コミュニケーション”の世界を作り出してきたのです。
■ヒトだけが顔で運命を変えられる!
そしてヒトは、巨大に発達した“脳”とタッグを組むことで、独特の超能力を獲得しました。つまり、その顔をするだけで、精神的、身体的なあらゆる状況を「自分自身に実現する」までになったのです。“顔”は相手に影響を与えるだけでなく自分自身を変化させるパワーを持つようになったのです。具体的にいえば、ヒトは、顔で「心を快活にする」「体を健康にする」「運命を好転させる」「夢を叶える」ことができるのです。これぞ、まさしく人間だけが持つ超能力。その仕組みやノウハウは、これまでこの連載でお伝えしてきたとおりです。私たちは、そのノウハウを活用して、幸せに生きていくことができるのです。だからこれ、絶対やるべきでしょう!!
次回は、「ヒトは、瞬時に顔を見分けて、生き延びてきた」というお話です。
●プロフィール
なかむら・かつひろ1951年山口県岩国市生まれ。早稲田大学卒業後にNHK入局。「サンデースポーツ」「歴史誕生」「報道」「オリンピック」等のキャスターを務め、1996年から「ワイド!スクランブル」(テレビ朝日系)ほか、テレビ東京などでワイドショーを担当。日本作家クラブ会員。著書に「生き方はスポーツマインド」(角川書店)、「山田久志 優しさの配球、強さの制球」(海拓舎)、「逆境をチャンスにする発想と技術」(プレジデント社)、「言葉力による逆発想のススメ」(大学研究双書)などがある。講演 「“顔”とアナウンサー」「アナウンサーのストップ・ウォッチ“歴史館”」「ウィンウィン“説得術”」
