「令和の極悪女王」上谷沙弥が「ラヴィット!」卒業で今こそ愛でたい“悪役らしからぬ”ブレイク物語!
9月26日放送の「ラヴィット!」(TBS系)で、女子プロレス団体・スターダムに所属する悪役レスラーの上谷沙弥がシーズンレギュラーから卒業した。1クールの任期を全うする最後の日には、ラテ欄に「沙弥様のとんでもない夢が叶う!?」と打たれ、番組ラストではスターダムの若手・羽南とのシングルマッチが生中継で届けられた。
上谷は、スターダムで「H.A.T.E.」と称される悪役軍団の一員。リーダーの刀羅ナツコ、琉悪夏、吏南らと“凶器”乱舞で暴れまわる。昨年9月、女子プロレス界でヒール(悪役)史上もっとも有名だったダンプ松本の半生に着想を得たNetflixシリーズ「極悪女王」が爆発的ヒットとなったことから、上谷に「令和の極悪女王」というキャッチフレーズが付けられた。ダンプの知名度に比べると足元にも及ばないが、今年ブレイクしたことは確かだ。
きっかけは、2月に放映された「千鳥の鬼レンチャン」(フジテレビ系)の企画「女子300m走サバイバルレンチャン」。上谷はナチュラルメイクによる事前インタビューで、「プロレスをいろんな人に見てもらいたい」とボロボロ泣きながら訴えて、悪役キャラを崩壊させた。そのVTRをスタジオで見ていたMCのかまいたち、千鳥は感動。上谷は、Xでトレンド入りした。
さらに後押ししたのは、元はアイドル志望で、10代からオーディションに100回以上は落ちた末に、バイトAKB(求人情報サイトとのコラボ企画で一時期活動したAKB48のアルバイトメンバー)だったというバックボーン。同活動の終了後、スターダムのアイドル部門で合格して、2019年にプロレスデビューした。
「サバイバルレンチャン」が放映された2カ月後の4月、「敗者引退マッチ」で“生涯のライバル”中野たむをマットに沈めて、その日限りで引退させた。その試合を観ていた番組関係者によって、「ラヴィット!」の曜日レギュラーが決定。「アメトーーク!」(テレビ朝日系)や「しゃべくり007」(日本テレビ系)で取り上げられるまでになった。しかし、ベテランプロレス記者は言う。
「女子プロ界ではスターダム一強時代が久しく続いていますが、“リアル極悪女王”ダンプ選手が猛威を振るっていたころとはぶっちゃけ、ファイトマネーも動員も1ケタ違います。古くはビューティ・ペアの1970年代はグッズ売り上げだけで1000万円。クラッシュ・ギャルズの80年代は1大会1000万円の売り上げで、“カリスマ”長与千種さんの最初の引退(89年5月6日、横浜アリーナ)は伝説の2億円興行でした。スターダムは“百単位”の動員で止まることもあり、ブームと呼ぶに値しない規模です」
女子プロレスは94年11月20日に、東京ドームに進出。ところが、空席が目立ち、「あの時すでに人気は下降線。つまり、ほんとの人気は30年以上前に止まっている」(前出・プロレス記者)と見る節もある。SNSや配信が主軸となっているエンタメ業界において、女子プロレスコンテンツに起死回生策はあるのか。
(北村ともこ)
