【もしがく】もしや三谷幸喜は後輩同窓生の宮藤官九郎を羨ましがっているのか、それとも嫉妬しているのか
放送中の菅田将暉主演ドラマ「もしがく」こと「もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう」(フジテレビ系)をTVerで何度も視聴していると、どうしても1つの仮説が頭をもたげてきてしまう。それは、三谷幸喜氏はクドカンこと宮藤官九郎氏が描く脚本世界を羨(うらや)ましがっているのではないか、いや待てよ、これは嫉妬しているのではないか、という仮説だ。
西暦1984年=昭和59年の東京・渋谷を舞台にしたこの作品は、昨年1月期に放送されて大ヒットしたクドカン脚本の阿部サダヲ主演ドラマ「ふてほど」こと「不適切にもほどがある!」(TBS系)を思い出さずにはいられない。「ふてほど」は、西暦1986年=昭和61年と西暦2024年=令和6年をタイムマシンバスに乗って、主人公らがそれぞれの時代を行ったり来たりすることで、「昭和」と「令和」の“時代”を浮き彫りにした作品だった。「昭和」に焦点を当てていることと「ふてほど」と略されて呼ばれていることは、確かに「もしがく」と似ているように思う。
さらに昨年7月期に放送されたクドカン脚本の小池栄子と仲野太賀W主演によるドラマ「新宿野戦病院」(フジ系)を思い出してほしい。この作品は、東京・新宿歌舞伎町にある、ホームレスや犯罪者などのワケありな患者も分け隔てなく治療する「聖まごころ病院」という架空の病院を舞台に、さまざまな人間ドラマが描かれた。「新宿歌舞伎町」という猥雑で雑多なイメージの強い場所で、日本の医師免許を持っていない野戦病院で働いていた経験を持つアメリカ国籍の女医と、「聖まごころ病院」を美容クリニックに建て替えようとする父親を持つ美容皮膚科医の息子が、最終的には協力して「聖まごころ病院」を何とかしようと奮闘するストーリー展開は、「もしがく」と似ていると指摘する人が多いのも納得だ。
三谷氏の民放ドラマ代表作である「古畑任三郎」シリーズ(フジ系)は、「刑事コロンボ」に対するオマージュか、それともパクリか、といった論議もさんざんされてきたことだから、そろそろ「三谷氏はクドカンを羨ましがっているのか、それとも嫉妬しているのか」を議論してもいいように思う。
三谷氏は日本大学芸術学部演劇学科を8年かけて卒業しているが、クドカンは同大学同学部放送学科を中退している。この大学のこの学部に限っては、「中退生のほうが卒業生より大成する」という“ジンクス”があるというから、議論を交わす時はその点もちょっとだけ考慮したい。
個人的には、三谷氏が脚本を描いたNHK大河ドラマ2004年放送の「新選組!」、16年放送の「真田丸」、22年放送の「鎌倉殿の13人」は素晴らしかったと思う。同枠でクドカンが脚本を描いた2019年放送の「いだてん~東京オリムピック噺~」が、NHK大河ドラマ史上、最低視聴率を叩き出してしまったことは残念だが理解できる。ただし個人的には非常に楽しく視聴し続けたことを記しておきたい。
(森山いま)
