ここまで高齢出産の現状を見てきたが、少しでもそのリスクを減らすべく、医療技術や機器も、日々進化を続けている。
まずは出生前診断で「胎児ドック」を取り入れている大阪の医院だ。こちらでは、脳がきちんと二つに分かれているか、へその緒の血流を確認できるかなど、最新の技術を使い胎児の状態を細かくチェックできる。
実際にドックを受けた女性は、安心感を強調する。
「40代後半での出産とあって、産まれてくる子供の状態が気がかりでした。そこで胎児ドックを受けたのですが、特に問題がないという結果になり、その後も無事に出産できました。周囲から高齢出産について色んな怖い部分や、ウワサを聞かされていただけに、胎児の状況を知れてすごく安心しましたね」
従来の3D/4Dエコーだけではわからない細かい状態を知ることで、出産に向けて対策を練ることができるというわけだ。
自身がそもそも出産できるのかをあらかじめ知ることができる検査も発達しているという。産婦人科医に聞いた。
「今は、自分が何歳まで妊娠できるのかを血液検査のみでチェックすることができます。自身に残された卵子の数がわかるので、『およそ38歳までは妊娠の可能性がありますよ』などと結果が出る。もちろん誤差はありますので完全に信頼はできませんが、人生設計の目安にはなりますよね」
最近の例では、バリバリのキャリアウーマンである女性が、この先仕事を続けるのか、それとも出産に向けて準備を進めるかを判断する目安にもなったという。高齢出産のリスクを負う以前に、計画的に出産・育児を考える材料となるものだ。
また、不妊治療においても昨今、新しい風が吹いている。栄養学と東洋医学を組み合わせた手法だ。
このやり方で無事に妊娠・出産を叶えた森田かなえさん(仮名、41歳)に話を聞いた。
「タイミング法などの一般的な不妊治療をしていたのですが、全然結果が出ずに落ち込んでいました。そこで新しい方法のある病院を訪れたところ、私自身の体質に問題がある疑いがあると言われたんです」
そこでは栄養不足を指摘され、漢方薬による体質改善を試したそうだ。
「もともと疲れやすかったり、頭がだるいのが普通でしたが、それが改善されました。その直後にもう一度タイミング法を試したところ、ついに妊娠に至ったんです。旦那と手を取り合って泣きじゃくりましたね。自分はもう妊娠できないと思っていたので」
このような新しい不妊治療により、出産に対するハードルが下がりつつある。
「最新の技術や、有名人の高齢出産のニュースがあるたびに、希望を持つ女性は多いことでしょう。しかし根本的に、女性には妊娠適齢期というものがあり、それに外れるとリスクが高まるという点に変わりはない。やはり、自分自身の身体の状態をきちんと知って、赤ちゃんにとっても産まれてきやすい環境を整える努力はするべきです」(前出・産婦人科医)
今後、ますます高齢出産が増えると言われている日本。一人一人が現状や事情を認識することが、健やかなお産へのただ一つの道だ。