3月29日からフィンランドのヘルシンキで開催される世界フィギュアスケート選手権。来年の平昌五輪の出場枠をかけた闘いとなることもあって、五輪と関連づけて話題になることも多い。だが、五輪のフィギュアスケートといっても、1908年のロンドン五輪では、今とは趣の異なる競技だったという。
「19世紀末から20世紀初頭にかけて、フィギュアスケートの競技の1つに『スペシャルフィギュア』というものがありました。選手が自分で申告したバラの花のような模様や星、十字などの図形を片足だけで滑り、スケート靴のエッジを使って氷上に描き出すという競技です。選手がどれくらいバランスを崩さず、正確に美しく図形を描き出せるかを競いました。ロンドン五輪で競技の1つに採用されました」(スポーツライター)
氷の上に正確に図形を描くというと、1990年まで行われていた規定演技「コンパルソリー」が思い出されるが、8の字を基本として描かれるコンパルソリーに比べ、より複雑で精巧な図形が使われたという。
「ロンドン五輪では、ロシアが金、銀と銅でイギリスの選手が表彰台に上がりましたが、実は3人のエントリーしかなかったんです。この競技は“幻の競技”と呼ばれ、五輪で採用されたのは1回だけ。見た目に地味な競技で選手によって申告する図柄も違いますし、どこで減点するか、“美しい”とは何かという問題もあり、審査が難しかったからです」(前出・スポーツライター)
4回転ジャンプ隆盛の今では考えられない静かな競技だが、繊細で華麗なステップやエッジ使いをする羽生結弦選手あたりに、ぜひとも再現していただきたい気がするのだが。
(芝公子)