この記事をご覧になっている淑女の皆様の中には、お仕事を持って働いておられる方が少なくないのではないかと想像する。そうした方は、会社員であっても、フリーランスであっても、是非、確定拠出年金の利用を検討されるといい。
「カクテイキョシュツネンキン」という単語に、今一つ馴染みの無い方がいらっしゃるかも知れないが、個人が老後に使うお金を独自に貯めて、自分で運用方法を選択することができる仕組みだ。
この制度の最大のメリットは、自分の老後のために貯めるお金に対して、所得税や住民税がかからない、「所得控除」の仕組みにある。
例えば、会社にお勤めの方は国の厚生年金に加入しているが、これ以外に加入している年金制度が無い場合、個人型の確定拠出年金に加入することができて、毎月2万3000円までの金額を自分の口座に積み立てることができる。年間で合計27万6000円になるが、このお金は所得税と住民税を差し引かれる前の所得から貯めることができるので、例えば、年収が400万円の方だと、税率が合計でおよそ30%、つまり、毎年約8万2000円の税金を節約できるのだ。
これは、確定拠出年金を使うと、ほぼ確実に手にすることができるメリットなので、「使わないのはもったいない!」。
読者がお勤めの会社に確定拠出年金制度があれば(これは「企業型確定拠出年金」と呼ばれる)、それを利用するといいが、無い場合には、ご自分で金融機関が提供している個人型確定拠出年金制度のどれかを選んで加入すると、先のような税制上のメリットを得ることが出来る。
一方、確定拠出年金のデメリットは、原則として60歳まで自分の年金資産を引き出せないことだ。しかし、将来に備えて貯めておくことが必要な額のほうが、確定拠出年金で貯められる制度的な上限額よりもかなり大きいことがほとんどなので、先のデメリットは問題にならない場合が多い。
確定拠出年金を提供する金融機関は、「運営管理機関」といういささかいかめしい名前で呼ばれるが、口座管理の手数料と、運用商品の手数料が安い所を選ぶといい。端的に言うなら、ネット証券がやっている運営管理機関は手数料が安く、運用商品の選択肢も豊富であり、総合的に得な場合が多い。
確定拠出年金では、数多く用意された運用商品の選択肢の中から、自分で運用対象を選ばなければならないが、悩む必要はない。手数料が安くて(これが大事!)、シンプルな商品を選ぶといいだけなので簡単だ(年間の運用管理手数料が0.3%未満のものを選ぶのが正解)。
国が確定拠出年金のような有利な仕組みを用意してくれているということは、将来、公的年金が今ほどにはアテにならないことと裏腹の関係にあるのだろうと筆者は推測している。
とはいえ、有利な仕組みは最大限有効に使うといい。特に働いている女性は、確定拠出年金を使うほうがいい、と申し上げておく。
(経済評論家・山崎元)