「キッチン」(福武書店)などで知られる作家の吉本ばなな。小説もさることながら、「食」にまつわるエッセイも人気で、食への関心の高さが伺える。そんな吉本が心酔するカツカレーがあることをご存じだろうか。
「自由が丘の贈り物 私のお店 私の街」(ミシマ社)は、著名人らが書いた自由が丘に関するエッセイをまとめた1冊。その中で、吉本はとあるお店のカツカレーをこう評している。
「この人生であと何回あのカツカレーが食べられるのかしら? と思うと切なくなるし、あんなすてきなものがあるなんて、この世は捨てたものじゃない、まだまだ生きていこう! と私は単純に思うのです。」(同書より抜粋)
吉本にこうまで言わしめるカツカレーを提供するのは、東京・奥沢にある「とんかつミカド」。東急東横線「田園調布」駅から徒歩約7分の場所にある。昭和のかおりがするとんかつ屋で、とんかつのほかにも、コロッケや自家製のマヨネーズなどが自慢だ。
店内には有名人のサイン色紙がずらりと並び、その中には「カツカレー最強」と書かれた吉本のものもある。ここを訪れたことがあるグルメ誌記者が語る。
「これまで印象に残った有名人を聞いたところ、還暦を過ぎたかと思われる店主は真っ先に吉本の名前をあげ、嬉しそうに彼女が書いた色紙を見せてくれました。エッセイの中で、吉本は『この人生であと何回あのカツカレーが食べられるのかしら?』と書いていましたが、店主は『この人生であと何回、吉本さんが来てくださるのか? できるだけ多くカツカレーを提供したいですね』とおっしゃっていたのが印象的ですね」
カツカレーでつながれた、吉本と店主の縁も“最強”だ。