カナダのモントリオールで開催された第47回世界体操競技選手権大会(10月2~8日)で“ひねり王子”こと白井健三が個人総合で4位、種目別の床と跳馬で金メダルを獲得。H難度の技もさることながら、その後のコメントもキレッキレだとして改めて評価されている。
今大会はエースの内村航平が予選初日、左足首を負傷して棄権。退場時に内村が無言で白井の肩をポンとたたく場面があったが、白井は「言葉なきメッセージ。全てをあれで伝えてくれた」と、内村の無念と託された思いを端的に表現。銅メダル獲得後は「航平さんに頼りたいと思う気持ちもあったが、神様が試練を与えてくれた。それに応えられたのは満足」と独り立ちできた喜びを素直に表現した。
種目別の跳馬では、2位の選手をわずか0.001ポイント上回っての金メダル。白井は「0.1以下の差は、気持ちや練習量の差だと思う。こだわって練習してきた差が、この0.001の差になったと思う」「僕の1年間の努力が3秒間に詰まっていた」と哲学的に自己評価してみせた。
「白井のコメント力は17歳で世界デビューした頃から評判でした。13年、世界選手権に初出場した白井は床で金メダル、跳馬は4位。しかし白井は『床は納得していない。それより僕は跳馬に感動している。練習してきたことが完璧にできた。順位は関係ないんです。体操はうまくできなくても金メダルを取ることもあれば、完璧にやってメダルを逃すこともある。17歳の僕が完璧にできたほうに価値があるということを、この年齢で知れたという意味で、この大会に出場した意義があった』とコメントし、インタビュアーの舌を巻かせました」(スポーツ紙記者)
尊敬する内村には「ひねりすぎて気持ち悪い」と演技を茶化される白井だが、21歳にして達者なそのコメントには、まっすぐすぎてひねりがほしいと感じる人もいるようだ。
(石田英明)