お笑いコンビ・キングコングの梶原雄太が12月9日、自身のYouTubeチャンネルを更新し、「M-1グランプリ 2018」(テレビ朝日系)に蔓延する“空気の重さ”について言及している。
「面白いのに。。なんかハネてない」。これが、かつて芸歴2年でM-1決勝の舞台に立った早熟芸人の率直な感想だ。漫才界のスペシャリストであるオール巨人や上沼恵美子、そして松本人志といった重鎮がドスンと構え、観客席にも異様なまでの緊張感が漂う年末恒例のビッグイベントであるM-1グランプリだが、梶原はそんな大舞台の“重い空気”の元凶が制作サイドによる演出の仕方にあると指摘。18時34分から3時間半にわたる生中継が組まれた今大会だが、梶原は「(番組開始から)ネタが始まるまでに1時間くらいあんねん」と過剰な引き延ばしによって芸人の待ち時間が長くなってしまうのも原因の一つであると考察した。
「芸人側の苦悩は分かりますが、M-1グランプリといえば、今や高視聴率を見込めるヒットコンテンツであり、なるべく長尺にすることでCM挿入の機会を増やしたくなるのも分かりますし、19時から始まるゴールデンタイムの前から視聴者を確保しておきたいという狙いもあるでしょう。年末の格闘技のビッグイベントなどもプライム帯の19時よりも前の18時台から番組を開始させることが多く、いずれも長尺の放送時間にはよく見られる傾向です」(テレビ誌ライター)
加えて、M-1の問題点を挙げるとすれば、やはりベテランの審査員が演者の目の前に鎮座しているということか。テレビ誌ライターが続ける。
「彼らは出場芸人を審査するためにスタジオにいる訳ですが、一般の観客のように大きな笑い声や黄色い歓声を上げる“盛り上げ役”ではないので、別室からモニターでネタをチェックするという選択肢でも審査や大会の運営に支障はないのでは」(テレビ誌ライター)
というのも、松本人志が総合司会(チェアマン)を務める「IPPONグランプリ」(フジテレビ系)では、松本はコメンテーターのような立場で別室からモニターで芸人の大喜利合戦をチェックするため、スタジオにはM-1のような張り詰めた空気は無く、観客も笑いやすいムードとなっている。
「M-1やIPPONグランプリといったお笑いコンペティションを主催する側にとって、最大の目的は芸人がやりやすい環境を整えネタのクオリティーを上げ、最終的に視聴者にとって見応えのあるコンテンツを作ることです。わざわざ芸人を緊張させるような演出をし、出場者がカミカミになるようであれば誰も得しませんよ」(前出・テレビ誌ライター)
一方で、M-1グランプリと同じく年末恒例の漫才特番といえば「THE MANZAI」(フジテレビ系)があるが、現在の同番組はM-1とは違い、多種多様な芸歴・ジャンルから出場するコンビの豊富さを売りにしているため、無駄な引き延ばしの演出は少なく、各々のコンビがテンポ良く次から次へと登場しながらネタを披露していく。王道のしゃべくり漫才やコント調のネタを披露する者もいれば、力技で沖縄基地問題をぶち込んだコンビもおり、“トライ&エラー”がある程度許されるようなバラエティ色豊かな構成となっている。M-1のように“噛んだら終了”“ミスは命取り”といったムードは無く、観客もどこかリラックスした雰囲気だ。
もちろんM-1が“当代随一の漫才師を決する”という大きな役割を背負っている以上、ある程度の緊迫感が漂うことは致し方ないが、来年以降は他の様々な番組を参考に、もう少し“演者がやりやすい舞台”にするのも、大会全体のクオリティーアップに繋がるのではないだろうか。
(木村慎吾)