やはりユーミンはユーミンだった。昨年大みそか放送の「第69回NHK紅白歌合戦」にて7年ぶりの紅白出場を果たした松任谷由実が、往年のヒット曲でファンを落涙させた。
1曲目にはデビューアルバムに収録されていた初期の代表曲である「ひこうき雲」、そして2曲目には映画「魔女の宅急便」のエンディングテーマとしても知られる「やさしさに包まれたなら」を披露。歌唱中に客席が映し出されると、多くの観客が曲を口ずさみ、なかには頬に涙が伝う姿も。圧倒的な楽曲の力と本人の存在感は画面越しにも伝わり、歌手別視聴率ではサザンオールスターズと米津玄師に次ぐ第3位の43.7%をマーク。平成最後の紅白にて、実に40年以上も前の楽曲でファンを魅了したのである。
そんなユーミンのステージに多くの視聴者が感動したなか、往年の活躍を知るファンからは、複雑な思いも聞こえてきた。学生時代にユーミンにはまったという40代の女性誌ライターは言う。
「歌唱力の衰えは悲しいほどでした。もともと歌の上手いほうではないですが、64歳となったいま、人前で歌うのが辛いレベルになってきたようです。伸ばすべきところで音が途切れてしまう姿には、老いには抗えないという現実を見せつけられた思いも。そんなユーミンを見て、私たちも年を取ったことを実感してしまいました」
懐かしさと悲しさの入り混じった涙を流していたファンもいたようだが、そんなユーミンから勇気をもらったとの声もあるようだ。女性誌ライターが続ける。
「なにより勇気づけられたのは、ユーミンが一貫して笑顔で歌い続けてくれたこと。その微笑みは加齢を受け入れて、『人はいかに年齢を重ねるべきか』を教えてくれたかのようでした。最初は衰えた歌声に悲しさを感じましたが、2曲目を歌うころには『そうか、これでいいんだ』と思えるようになったのです。若いころはユーミンから大人の女性について学びましたが、今でも彼女からは生き方の道しるべを示してもらっているかのようです」
そんなユーミンのステージはファンにとって、目に映る全てのことがメッセージだったに違いない。
(白根麻子)