1月15日に東京・町田市で発生した50代教師による男子生徒への暴行問題をめぐり、教育評論家の“尾木ママ”こと尾木直樹氏への批判が続出しているという。この問題では生徒側が再三にわたって教師を挑発し、ついにキレた教師が生徒に手を出したという経緯が判明。それゆえ世間では教師に同情する声も多く、寛容な処分を求める署名は5000筆を突破している。その一方で、理由は何であれ教師による暴力や体罰はNGという意見も少なくない。
後者の立場にある尾木氏は1月23日に、「体罰とは【身体に加える有形力】」というタイトルでブログを更新。アメリカでは体罰に関して、保護者から体罰を与えることを認められた生徒のみを対象に、パドルを使ってでん部を1~6回叩くという定義があるとし、教育委員会への報告義務があると説明した。その上で、そういった体罰既定のない日本では「規定無い有形力の行使は単なる暴力・暴行にすぎません」と糾弾したのである。
さらに「警察により逮捕も可能です!」と体罰に関して警鐘を鳴らし、「感情論ではなく もう一度 冷静に考え直したいですね」と問題を提起した。その主張に対してアメリカ在住経験のあるライターが疑問を呈する。
「たしかに全米19州では州法で体罰が定義されており、その法律に従って年間10万件以上の体罰が行われています。しかしそういった事実をもって、今回の件を『教師による体罰は法律違反』といった観点で捉えるのは、短絡的ではないでしょうか。尾木ママの主張に対しては『5000筆の署名を無視するのか!』との批判が殺到していますし、なによりアメリカの事例を挙げるのであれば、実際の高校ではどうなっているかを紹介しないのは一面的すぎます」
同ライターによると、今回の問題がアメリカで発生したら、教師が生徒を殴るまでに至らなかった可能性が高いという。契約社会のアメリカでは教師と生徒の両方が様々な規則に拘束されており、言葉を含むあらゆる暴力行為は厳に禁じられている。そして今回のような生徒による挑発は明らかな規則違反であり、高校内に常駐している警察官(スクールポリス)により制圧され、時には手錠を掛けられることすらあるというのだ。
「アメリカの学校における“定義”を例に出すのであれば、その定義によって生徒側も縛られていることにも触れるべき。アメリカなら今回の生徒による挑発は“授業妨害”とみなされ、警察官による逮捕も十分にありえます。しかし尾木ママの指摘はそういった生徒側の責任を無視しており、教師の暴力という一点のみに注目して批判している。これは『暴力反対』にこだわり過ぎた思考停止ではないでしょうか」(前出・ライター)
もちろん尾木ママの指摘に賛同する保護者もおり、この問題を巡ってはしばらく、喧々諤々の論争が続きそうだ。
(白根麻子)