フジテレビ月曜9時枠といえば、かつては民放ドラマの“王者”という認識を国民が共有していたことだろう。世に送り出した“名作”は数知れず。しかし、その潮目が完全に変わったのは2016年の「ラヴソング」(パート2で紹介)「好きな人がいること」(パート3で紹介)となるのだろうか。“凋落の月9”となって以降、もっともシャレにならなかったのが、今回、取り上げる作品なのかもしれない。
・「突然ですが、明日結婚します」(2017年)
主人公の高梨あすかを演じたのは西内まりや。結果的に西内まりやはこの作品の出演を最後に事務所とトラブって姿を消すことになったのだから、いろいろな意味で闇に葬られた月9のひとつである。平均視聴率は圧倒的ワーストの6.7%と、どこからどうみても地獄絵図、月9のブランドが地に落ちたことを世間に知らしめた作品だった。
そもそも、西内まりやを主演に起用する経緯も散々なもの。瞑想状態の月9は並み居る大物女優から出演を忌避される状態で、出演者を確保することすら難しくなって留学を控えていた西内まりやに頭を下げて主演を引き受けてもらったという。それだけでもだいぶケチがついているが、相手役の名波竜を演じたのがflumpoolの山村隆太ということも大問題。本作が月9どころか俳優デビューという山村、一部には熱心な大ファンもいるのだろうが、“月9でヒロインの相手役”にしては明らかに知名度がなさすぎた。福山雅治の相手に無名の藤原さくらを起用した「ラヴソング」も大コケを招いたが、西内まりやと山村隆太の組み合わせはテレ東の深夜ドラマがせいぜいといった組み合わせ。キャスティングがままならなかった時点で失敗は決定的だった。
その上悲惨なことに、漫画原作のストーリーなのだが、それとて“キャスティングありき”。もともとキムタクなど大物の起用を前提に内容を決めるのが月9流ではあるが、それは大物の起用があってこそ成り立つもの。西内まりやと山村隆太というやっつけ主演に無理やり探してきた原作を当てはめるだけでは、到底成功するわけがないのであった。
(山三大志)