かつて栄華を極めたフジテレビ月曜9時枠ドラマ、通称「月9」。しかし、その歴史に泥を塗ってしまった…もしくはなかったことにされてしまった“爆死作”にスポットを当ててきたが、最後を飾るのは、昨年、放送されたこの作品。
・「海月姫」(2018年)
朝ドラ「べっぴんさん」でブレイクした芳根京子を主演に起用した「海月姫」。根強いファンのいる漫画が原作で、そのあたりから大コケすることはない…と思いきや、すでに映画やアニメになっていたから三番煎じ。さらにその映画も主演は同じく朝ドラでブレイクしたばかりの能年玲奈で、その彼女が事務所と揉めて「のん」などと名乗るようになっていたわけで、原作ファンには申し訳ないが完全に“いわくつき”だったのだ。
月9は前年の2017年夏にコード・ブルーの第三シリーズを放送して久々に視聴率14%台に復帰していた。しかし、その次の作品が篠原涼子に主婦市議を演じさせる大失態、視聴率は半分以下に落ち込んだ。そうした流れの中でいわくつき原作を持ってきたのでは失敗するのは当然だった。
一応制作側も試行錯誤をした気配があって、原作とは兄と弟を入れ替えたり韓流スターの追っかけからフィギュアスケート・羽生結弦選手の追っかけに変えたり(これは保守派からのバッシングを警戒したのだろうが、藪蛇である)、あまり意味のない原作イジリをする程度。結局視聴率は前作をさらに上回る6.1%(全話平均)という大ゴケぶりを見せつけることになった。
そもそもストーリーも“釣り合わない2人の恋”といういわばロミジュリパターンをなぞったもの。黄金時代の月9のラブストーリーはそうした変化球ではなくて、まさに美男美女の王道ラブであった。迷走を続けてフジテレビはまともなラブストーリーすら作れなくなったことを世間に知らしめたのが、「海月姫」だったのだ。
この「海月姫」以降の月9枠は、ラブストーリーはすっかり諦めて警察・医療系が続いている。「東京ラブストーリー」「101回目のプロポーズ」「やまとなでしこ」などに代表されるような王道ラブストーリーで大ヒットを連発していた黄金時代のフジテレビ月9枠。その幻影を追いかけることを完全に諦めて、少しずつ視聴率も回復傾向にあるようだ。果たして、再び、月9がラブストーリーでブレイクする日はやってくるのか。古くからのドラマファンの多くは、ラブストーリーで大ヒットを飛ばしてほしいと思っているはずだ。
(山三大志)