お笑いコンビ・雨上がり決死隊の宮迫博之と、ロンドンブーツ1号2号の田村亮が7月20日に緊急会見を実施。契約解消された吉本興業から許可を得ない形で実施した謝罪会見だったが、そこには一定の説得力と猛省を物語る“言葉のパワー”があった。
黒のスーツに身を包み、酷くやつれた表情で記者の前に現れた2人は、そもそもの騒動の発端である反社会的勢力への闇営業、ならびに金銭の授受、そしてその事実を一部隠して世間に発表していたことを詫び、当然ながら反社会的勢力による詐欺を被った被害者への謝罪も忘れなかった。
目に涙を浮かべた宮迫は騒動発覚から吉本興業との協議までの経緯を事細かに説明し、その過程の中で、一刻も早く謝罪会見を催したい宮迫や亮に対して、吉本側が“静観”の姿勢を示したことで、双方の間に方向性のズレが生じたことも吐露。途中、パワハラとも解釈されかねない発言が吉本興業の岡本昭彦社長から浴びせられたとの事実も明かすなど、次第に“暴露会見”の様相を呈したが、終盤に「吉本興業に対する想い」を尋ねられた宮迫は「大阪人に生まれ、こんなアホを30年間育ててくれた吉本興業には…そりゃあ…感謝…感謝しかないですよ…。こんな…こんなこと(会見)したくないに決まってるじゃないですか」と号泣しながら訴えている。
「この宮迫の号泣会見にフィードバックする形で2日後に岡本社長が会見を実施しましたが、長年話芸を売りにしてきた宮迫らの“刺さる会見”とは大きく異なり、後者はダラダラと長い印象を受ける“言い訳会見”のようなものになってしまいました。しかし、これは岡本社長の問題ではなく、やはり小さな会見場を独壇場に変えた宮迫の手腕を讃えるべきでしょう。芸人としてだけでなく、役者や司会業をハイレベルにこなし、ハリウッド大作の声優業も任される器用なマルチタレントでもある彼は、真剣に説明しなければならない場面では淡々と事実を述べ、熱量を込めるべき感情的なシーンではその想いを独自の間合いで一気に放出させるなど、長い会見の中にあっても巧みなメリハリをこしらえていました。これは素人にマネのできる芸当ではなく、2時間以上におよぶ会見をフルで視聴するに耐えれる“ショー”に近い。今でもカメラレンズさえ向けられれば、宮迫にしか出せない価値があるということでしょう」(テレビ誌ライター)
吉本興業側は宮迫らの謝罪会見実施に消極的だった理由として、“芸能人による大方の謝罪会見が失敗に終わってきた”との見方を示していたとされるが、岡本社長のような会見を開いていては「失敗」の烙印を押されてもおかしくないかもしれない。
しかし、「吉本ブランド」が長年にわたってテレビ界を席巻できたのは、宮迫のような天賦の話芸を持つ芸人の活躍によるものであり、彼らはどんな逆境においても自分の言葉で道を切り開いていくことができる。
「ZOZOの前澤友作社長も宮迫らの会見についてツイッターで『会見場の雰囲気やライティング、お二人のメイク、事務所の暴露話、どれをとってもしっかり作り込まれているように感じた。とても反省はしているんだろうけど、このお二人、いろいろ諦めていないと思う(現在は削除)』と呟き、賛否を集めましたが、岡本社長の会見を終えた今ならば、やはり宮迫らの会見が一枚も二枚も上手だったことが分かります。もちろん本人たちに“作り込んでいる”意識はないのでしょうが、自然と大衆の心を鷲掴みにするサガのようなものが染みついているのかもしれません。簡単に芸能界から追放してしまうにはあまりにも惜しい才能ですね」(前出・テレビ誌ライター)
とはいえ、世間に嘘の説明をしたことや、そもそも特殊詐欺グループから金銭を受け取っていたことについての禊を払う必要が無くなったわけではない。これから先、宮迫らにどんな展開が待っているのかは分からないが、“史上最も成功した謝罪会見”を乗り越えた男たちにセカンドチャンスが与えられることを願いたい。
(木村慎吾)