小学生・中学生を対象に進学塾で子どもたちを指導していると、「うちの子、算数が苦手で…」と相談をいただくことが多くあります。中には他の塾で成績が上がらず、転塾をしてくる子も。子どもたちが「算数」を得意になるには、どんな方法で学ばせたらよいのでしょうか。私が出会った子どもたちの例から考えてみましょう。
■「KUMON」に通っていたKくん
小学6年生のKくんは、出会ったときから計算力が抜群でした。小学1年生の頃から「KUMON」に通っていたそうで、小学生にして中学2年生で学習する単元までマスターしていました。けれども、算数のテストでは高得点を出せません。そこで、個別指導で算数の文章題を基礎からやり直すことに。
1問ずつ声に出して問題を読んでその意味を確認し、問われていることは何かを見つけて立式する流れを何度も何度もサポートしながら繰り返しました。その結果、中学2年生では「算数得意!」と自ら発言するようになりました。「計算」は練習さえ積めば機械的に覚えることができますが、読解と合わせて鍛えなくては算数の総合的な力は高まりません。
■せっかく式が合っているのに計算で間違うAちゃん
小学3年生のAちゃんは、「おしい!」間違いで失点し、理解できているのにも関わらず高得点を逃していました。読解力はあるのですが、文章問題を読んで足し算だと思っても、書くときに「-(ひく)」と書いてしまったために答えを間違えてしまったということも。集中力が足りず、確実に進めていくことができなかったのです。
Aちゃんには、算数の個別指導で文章問題をたくさん解くことを勧めました。問われていることに線を引いたり、使う数字に丸をつけたりすることで、自分の立式と問題文とを照らし合わせて確認してから解くように伝授。間違いを防ぐ工夫をすることで、ミスを減らせるようになりました。
■「自分は計算ができない」と思い込んでいるYくん
小学5年生のYくんは、お母さんに「うちの子、算数ができないので何とかお願いします…!」と連れてこられた子です。「自分はできない」と刷り込まれているために、「どうせできないのにどうしてこんなにたくさんやらないといけないんだ!」と、授業に真剣に向き合うことができません。最初は集団授業に出ていましたが集中できず、計算に特化した塾に転塾。
「計算だけ」のドリル形式で初歩的な計算に戻って「満点をとる」ことを繰り返し経験していくことで、「これもできた」「こっちもできた」の自信を積み上げ、小学生のうちに小学校で習うすべての計算をマスターしました。
■その子に合った方法を教えてくれる塾に
Kくんは「KUMON」に通っていたことで計算の自信を積み上げましたが、算数の力は今ひとつ伸び悩みました。Aちゃんはどれだけ分かりやすく教えてくれる塾に入っても、ミスを減らすための工夫をしなければ伸びなかったでしょう。Yくんは計算に特化し自分にあった単元からスタートすることで、自信を取り戻しました。計算ドリルを家庭で行う、計算に特化した塾で学ぶ、そろばんを習う……。算数の力を伸ばすための方法はたくさんありますが、どこで何を学んでも、「自分の力でできた!」と実感できなければ実力を高めることはできません。最初はどこで始めてもいいでしょう。大切なのは「伸び悩んでいる」兆候を見逃さず、その子にあった方法に変えること。方法さえその子に合っていれば、自分で伸び続けることができるのです。
塾を探すとなると、最適なところを選びたいばかりに迷ってしまいますが、まずはやってみることが肝心です。その子に合っていなければ、別の方法に切り替えればよいのです。その子によって得意分野や練習法は異なりますから、能力がないと決めつけるのではなく、伸ばしやすい方法をみつけてあげましょう。
(Nao Kiyota)