吉本興業所属タレントによるYouTubeでの活動が徐々に軌道に乗り始め、その人選においても事務所の“名采配”が際立っている。
「吉本芸人のユーチューバー」といえば、筆頭して浮かぶのがやはり「カジサック」ことキングコングの梶原雄太や、直近数カ月間で異様な伸びを見せる「中田敦彦のYouTube大学」を運営するオリエンタルラジオ中田敦彦だ。前者はチャンネル発足当初の目標である“登録者100万人”の大きなノルマを達成し、溢れる知性や博学ぶりを思う存分発揮する中田もまた8月27日時点でチャンネル登録者が89万人を超え、梶原を猛追。“教育系ユーチューバー”としてすでにトップクラスの地位を築き上げている。
「やはり天下の吉本興業によるバックアップを受けているだけあり、彼らの動画は素人がただただ公道でハシャぐだけのものや、“コーラ一気飲みしてみました!”などといった類いのものとは一線を画し、テロップや編集、サムネイルの装飾で他を圧倒的に差別化しています。彼らの特徴としては一般的な素人のユーチューバーと違い、吉本から集められたチームで動画制作を行なっている点。演者やスタッフ、カメラマンなどで分業化し、さながら“小さなテレビ番組”を作っている要領です。チャンネル登録者がうなぎのぼりになるのも頷けますね」(テレビ誌ライター)
また、“どの芸人をユーチューバーにするのか”という人選に関しても、吉本は巧みな采配を見せる。
「梶原に加え、中田敦彦、インパルス堤下敦、なかやまきんに君など、最近にYouTubeチャンネルを開設した吉本芸人に共通する要素といえば、以前に比べてテレビ出演回数が減少傾向にあるというもの。その背景には不祥事や問題発言、人気の低迷など様々な理由がありますが、吉本からすれば、“テレビで稼げないならYouTubeで稼いでこい”といったところでしょうか。バラエティに引っ張りだこの人気タレントはテレビの仕事に専念させ、燻る芸人にはチームを派遣してYouTube活動をさせる。この使い分けによって各タレントの才能を余すところなく引き出し、売れない芸人を部屋に引きこもらせていた場合には決して生まれなかったYouTubeからの広告収入を手にすることができています。つまり、売れてる芸人からも、売れない芸人からも異なるプラットフォームから収益を出させることができているというわけです」(前出・テレビ誌ライター)
この新たなシステムが慣例となれば、テレビからの需要を失った芸人や、吉本側が売り出したいタレントをYouTube上でファンへ売り込むことも可能となり、“6000人”とされる所属芸人を効率よく回すことができるだろう。
創業から100年以上が経過し、お笑いプロダクションとして頂点に君臨し続ける吉本興業だが、その商人魂には一切の陰りすら感じられないということだ。
(木村慎吾)